中国以外からの輸入関税引き上げも

 米国民に対する減税に関しては、トランプ氏には前政権時代に税制改革を通じて連邦法人税を当時の35%から21%に引き下げたという実績がある。これに対し、バイデン大統領は2024年3月の一般教書演説で、現行の21%の連邦法人税を28%に引き上げると同時に、保有資産1億ドル以上の富裕層の所得税に最低25%を課税するよう連邦議会に求めた。

 トランプ前政権下で成立した税制改革のいくつかは2025年末に失効することもあり、今後連邦議会では税制を巡る議論が白熱していきそうだ。トランプ陣営の中には連邦法人税を15%に引き下げるべきとの声が聞かれる。トランプ氏が大統領に返り咲いた際には再び議会に減税を主張する可能性は十分に考えられる。

 トランプ陣営には減税で減少する連邦政府の歳入を関税の引き上げで埋め合わせるという意見がある。それもあっての「輸入に対する関税の引き上げ」という公約だが、この文脈では中国以外からの輸入品を対象としていると考えられる。トランプ氏は世界各国からの輸入に対して全品目一律10%の関税引き上げ措置の可能性を仄めかしており、日本も対象に含まれることになりうる。

強硬姿勢で各国からの譲歩引き出しが狙いか

 ただし、実際には日本を含めた同盟国の存在を無視して進めることは難しい。過去の考え方や行動から判断すると、トランプ流の「ディール」が狙いであろう。

 同盟国との外交を「ビジネス」のように捉え、交渉の取引に関税を利用する動きが想像できる。まずは関税引き上げの可能性をちらつかせつつ、引き上げないための条件も同時に見せて、各国から様々な譲歩を求めていくのではないだろうか。

 最後に、③のメキシコ・カナダと結んでいる貿易協定のUSMCAについては、どのような動きを見せるのか。おそらく話題の中心は自動車産業となると考えられ、日本企業も現地の拠点があることから無縁ではなさそうだ。