サンフランシスコのダウンタウンでは、テナントが抜け、新たな入居企業を募集しているビルが目につく(写真:AP/アフロ)サンフランシスコのダウンタウンでは、テナントが抜け、新たな入居企業を募集しているビルが目につく(写真:AP/アフロ)
  • 州別GDPで全米1位のカリフォルニア州だが、サンフランシスコでは窃盗の急増など治安悪化による小売店撤退がニュースになり、ほかの都市部でもホームレスの増加が問題になっている。
  • 生活コストや人件費の高さから、他州に大量脱出する「カリフォルニア・エクソダス」によって人や企業の流出が続く。
  • その流れに歯止めをかけようと、「流出税(Exit Tax)」の導入案も浮上しているが、反対論があるほか、根本的な問題解決にはなりそうにない。

(水野 亮:米Teruko Weinberg エグゼクティブリサーチャー)

治安の悪化に悩む「天国」

 米国のカリフォルニア州について読者のみなさんはどのようなイメージを持っているだろうか。

 1年を通じて温暖な気候、青い空や海、真っ赤な夕日、ハリウッド、シリコンバレー、霧のサンフランシスコ…などが思い浮かぶのではないか。現地事情に精通している読者のあいだでは同州が環境、労働者、不法移民、LGBTの保護など多くのリベラルな分野で先頭を走っていることも知られているであろう。

 筆者もそうだった。米国東海岸のニューヨーク州、五大湖のほとりのオハイオ州、中西部のミズーリ州などに住んでいた筆者は、7年前の2016年にカリフォルニア州のロサンゼルス近郊に移り住むまでは、おおむね上記のような「理想」のイメージを持っていた。

 実際に住んでみて、東海岸や中西部で経験した猛暑の夏、極寒の冬など厳しい気候を考えると、南カリフォルニアの爽やかな天候はまるで天国のようだ。

ロサンゼルスに近いビーチリゾートとして有名なサンタモニカ。かつては大陸を横断するルート66の終点だったロサンゼルスに近いビーチリゾートとして有名なサンタモニカ。かつては大陸を横断するルート66の終点だった(写真:アフロ)

 しかし、ここへ来て、はたしてカリフォルニア州が「天国」かといえばそうとは言えない面も強くなっている。

 特に最近問題になっているのは治安の悪化だ。