中国を「敵国」扱い

 まず①の「中国のMFNの撤回」は多少説明が必要であろう。

 米国は輸入先の国それぞれに特定のステータスを与え、それに基づき異なる関税率を設定している。中でも多いのは米国と「正常な貿易関係を有する(恒久的正常貿易関係)」国であり、これらの国からの輸入に対しては一律で一般関税率(MFN税率)を課している。中国もこのステータスに属する。

 一方、キューバ、北朝鮮、ロシアなど、米国のいわば「敵国」には恒久的正常貿易関係のステータスを与えず、これらの国からの輸入にはMFN税率よりも高額な関税率を設定している。

 つまり、①の中国のMFN撤回とは、「敵国」に対する高額な関税率を中国からの輸入にも適用することを意味する。中国からの輸入は現在でもトランプ前政権が発動した最大25%の追加関税の対象となっているが、MFNの撤回でさらに40%ほど関税率が引き上がるとの試算がある。

超党派で強まる対中強硬論

 上述のとおり、トランプ氏は前政権時代にも中国のほぼ全産品の輸入に対して最大25%の追加的な関税を課し、これを交渉材料として、再エネ、EV、人工知能(AI)などハイテク産業に対して供与している補助金や技術盗用などの廃止を中国に迫った。

 米国民のあいだで強まる中国懐疑論の波を反映してか、米国の連邦議会では超党派で対中強硬路線が強まっており、この流れは大統領選後にも続くと見られる。

 トランプ新政権による対中関税の引き上げの動きは、過去にも見た通り、中国からの譲歩を引き出す交渉材料として利用する意味合いが強いが、基本的には議会と調整しつつ、厳しい対中政策を展開していくと考えられる。

 次に②の「米国民に対する減税、輸入に対する関税引き上げ」はどうか。