史上初の4万円が目前の日経平均株価。写真は3月1日の終値を示す外為どっとコムのモニター(写真:共同通信社)

日経平均株価の高値更新に沸き立つ株式市場。一部の株式指標の閾値超えにすぎないとは言え、シンボリックな出来事であり話題を集めている。新NISA(少額投資非課税制度)のスタートというイベントも重なり、今まで株式とは縁のなかった人々が投資に目を向けるきっかけになるかもしれない。世界的にも株価上昇が顕著になっているだけに、日本株の位置づけを確認しておく必要がありそうだ。今回は、日本株の現状と、今後の注目点について確認してみよう。

(平山 賢一:東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト)

配当込みの東証株価指数(TOPIX)は3年前に高値更新

 2024年2月の株価高値更新で注意しなければいけないのは、一部の株式指標に限られており、東京証券取引所の代表的な株価指数である東証株価指数(TOPIX)などは、高値を更新しているわけでないという点である。

 同じ日本の株価を代表する指標でも、算出手法はまちまちであり、上げ下げのタイミングもずれるため、一部指標の高値更新は、それほど大きな意味を持つわけではない。

 この東証株価指数をじっくり見ると、株式投資家が受け取る配当も含んだ配当込み東証株価指数は、すでに今から3年前の2021年1月に1989年12月の高値を更新していたことに気づく。

 金融のプロフェッショナルは、通常配当も含んだ株価指数で株式投資成果を判断する。そのため、むしろ重要な節目は3年前にあったと考える方が自然である。

 この時期以降、日本株の上昇も勢いづいているだけに、節目は2021年前後にあったと見なすことも可能であろう。

インフレ率のボトムも3年前だった

 さらに、コロナ渦中でインフレ率(消費者物価指数の変化率)がボトムをつけたのも、2020年末の▲1.2%であり、時代の分岐点は現在ではなく3年前にあったと言えそうだ。

 米国のインフレ懸念が本格化し、米2年国債利回りも0.10%でボトムをつけたのは2021年2月であった。確かに円相場(対米ドル)も、100円台前半から下落基調に転じているのも2021年初からであり、節目を設定するには辻褄が合う。

 以上のように、いくつかの経済指標を確認するならば、現在の株価上昇に至る出発点は、3年前にあったと言えよう。名目上の株価の高値更新ばかりにこだわり過ぎると、現在の位置づけが曖昧になるため注意すべきかもしれない。

 虚心坦懐に現実を観察するならば、過去3年間を経て現在の位置づけがあり、その背景が何であったのかを確認していく作業が求められるはずである。