京都の晴明神社にある安倍晴明像。安倍晴明は、日本の平安時代中期の陰陽道の第一人者である陰陽師だった(写真:beibaoke - stock.adobe.com)

『源氏物語』の作者、紫式部を主人公にした『光る君へ』。NHK大河ドラマでは、初めて平安中期の貴族社会を舞台に選び、注目されている。第5回「告白」では、三郎の素性を知ったまひろがショックのあまり伏してしまう。そして、まひろから兄の犯行を知らされた三郎は……。今回の見どころについて、『偉人名言迷言事典』など紫式部を取り上げた著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)

平安時代に行われていた「医師(くすし)」による治療法とは

 前回は、吉高由里子演じるまひろ(紫式部)が、新たに即位した本郷奏多演じる花山天皇の前で「五節の舞」を披露。柄本佑演じる三郎(藤原道長)の素性を知り、ショックを受けるという場面で終わった。

 続く第5回「告白」では、冒頭から、まひろが床に伏してしまっている。三郎が実は右大臣・藤原兼家の息子だということを知ったからだ。

 相手の身分の高さに驚いたばかりではない。「五節の舞」を鑑賞していた三郎の横には、憎き藤原道兼の姿があった。このドラマでは、道兼はまひろの母を殺した犯人である。ひそかに惹かれていた三郎が、自分の母を殺した男の弟だった、という事実に悲嘆して、まひろは倒れてしまったのである。

「3日前から、食事はおろか水さえも口にされず、起き上がることもできず、どうしたらいいものかと……」

 そう困り果てながら、まひろの弟・惟規の乳母で、信川清順演じる、いとに案内されながら、僧侶が何やら異様な雰囲気を放つ怪しげな巫女を連れて来た。

 僧侶はいとに「貴方様は、姫様のお母上で?」と尋ねながら、まひろの母が6年前に亡くなったという情報を引き出す。すると、僧侶と巫女は「これでいきましょう」とばかりにうなずきあっている。なんだかとても怪しい。

 僧侶がおもむろに、伏せるまひろのそばで祈祷を始めると、巫女は奇妙な舞をしたかと思えば、いきなりぶっ倒れる。すると、僧侶が「降りました。そなたは誰じゃ」と巫女に問えば「……娘、母じゃぞ」と言い出した。殺された母が降臨したというのだ。

 とんだ茶番だが、平安時代の貴族社会においては、「医療」だけではなく「呪術」も治療手段とされていた。医療は「医師(くすし)」と呼ばれる治療者が、薬物のほか針や灸、場合によっては、蛭食治療などを用いて病人に対応していたようだ。

 蛭食治療とは、蛭(ヒル)に腫物などの悪血を吸わせる施術法のことである。平安時代の公卿、藤原実資の日記『小右記』にも「蛭喰」の文字が見られることから、頻繁に行われていたことがわかる。

 平安時代の医師は、人体の構造や機能について当時なりに体系的な知識をもちながら、上記の手段によって日々治療を行っていた。