たとえ思いつきであろうと、地に落ちた人気をわずかでも回復させたいという政治パフォーマンスであろうと、菅直人首相が中部電力浜岡原子力発電所の運転停止を要請し、政府のエネルギー計画の撤回に踏み切ったことは、全くもって喜ばしい。
東海第二原発も大惨事になりかねなかった
原子力発電所は安全だと言い張ってきた政府と電力会社の嘘がばれたいま、福島第一原発の二の舞いは起こり得る。
いったん事故を起こせばこれだけの被害(まだ拡大する)を引き起こす原発を彼らの手に委ねるのは国民の選択肢としてあり得ないからだ。
もし、福島第一原発の後に続く原発事故が日本のどこかで起きれば、もはや完全に取り返しのつかないことになってしまう。
その意味で、瓢箪から駒とはいえ、菅首相の決断は歓迎されるべきものだろう。
実際、5月11日には今回の震災で茨城県にある日本原子力発電の東海第二原発で、あわや大惨事を引き起こしかねない状況だったことが明らかになった。
朝日新聞の報道によると、震災後の停電とその後の高さ5.4メートルの津波の影響で非常用発電機1台と非常用炉心冷却装置1系統が使用不能になって炉心温度が上がり、炉心内で発生した水蒸気を圧力容器に逃がす作業で、何とか急場をしのいだという。
停電と5メートルの津波でも、危機が目の前に来ていたわけである。想定される東海沖地震の震源地付近に建ち、かねて危険が指摘されている浜岡原発の一時停止は、日本国の未来を懸けたリスクマネジメント上、当然の判断と言える。
この菅首相の行動に対し、密室での決定で意思決定のプロセスが明確でない、浜岡を特別視する判断基準が分からないとの批判が相次いでいて、それはその通りだと思う(「密室で決まった浜岡原発の停止要請をどうして賞賛できるのか」)。手続きとしては明らかに間違っている。
しかし、仮に中部地区で夏場に電力が足りない状況になったり電気料金が上がったりしても、万が一の原発事故の大きさに比べたら比較対象とはならない。