福島第一原発の事故は、発生から1カ月半が経過しても、いまだ冷却化の見通しさえ立っていない。東京電力による事故の終息に向けた工程表が発表されたが、計画通りに進められるはずがないと疑っている人が大半だろう。

 ニュースでは毎日のように、1号機から4号機までの4機の原発のそれぞれの水温とトレンチ内の放射能汚染水量の変化、それに放射性物質による周辺地域の汚染状況が事細かに報じられている。

 現地では、1000人に及ぶ方々が作業を続けており、事故当初のような不眠不休に加えて、満足に食事も取れないという過酷な労働環境は幾分改善されてきたようだが危険であることに変わりはなく、強い緊張状態にさらされて、心身共に疲労が限界に来ているのではないかと思う。

 被災して避難を余儀なくされた方々に対するケアも含めて、より長期的な視点で人材の活用を図らなければ、この未曾有の危機は決して乗り切れない。

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 経済評論家の大前研一氏は、「週刊ポスト」(4月8日号)に掲載の「『ビジネス新大陸』の歩き方<特別版>」の中で、諸家に先駆けて今回の原発事故における解決の難しさを具体的に指摘していた。

 「4月8日号」とあるが、実際には3月28日に発売されており、<本稿の執筆時点では、東日本大震災で損傷した東京電力福島第一原子力発電所への外部電源の復旧工事の傍ら、放水・冷却作業が続けられている>と前言で触れている。

 同号には、「31歳自衛官は『俺が終わらせてくる』と子供に告げて原発に突入した」との記事も掲載されている。自衛隊とハイパーレスキュー隊により、使用済み核燃料プールへの至近距離からの放水が成功して、誰もがひとまず安堵していた時であり、私は大前氏のいち早い指摘に自分の不明を開かれる思いがした。

 <だが、すべての冷却装置が正常に稼働しない限り、解決に向けての“最初の関門”すら突破できない。なぜなら、まだ新聞やテレビは報じていないが、今後最低5年間は原子炉と貯蔵プールにある使用済み燃料を冷やし続けなければならないからだ。>

 として、大前氏は原発を完全に停止させるまでに必須な作業を5つの段階に分けて詳しく説明したあと、

 <最後の難関は、炉心冷却のために注入された水を、できるだけ循環させた後、最終的には放射性を帯びた状態でどこかに排出しなければならないということだ。原子炉の1次冷却システムは、放射性物質を外部に漏出しないよう完全なクローズドループになっているのだが、外部からいくらでも水を注入できるということは、冷却システムのどこかでパイプが破断するなどして、水が漏れているということだ。そこから放射性を帯びた水が近隣の海に流れ出てしまうので、放射性物質によるダメージが水産業にまで拡大することは避けられない。>