(写真:Jakub Krechowicz/Shutterstock.com
  • 甘い言葉でたくみに若者を犯罪に誘い込む「闇バイト」。手軽に高収入を得たいというイマドキの価値観が、ネット時代の犯罪を誘発している。
  • 「ルフィ」と名乗り実行犯を陰で操る指示役がいる犯罪グループが注目されたが、似たような構図はカネに目がくらんだ男の末路を描いた落語『死神』にも登場する。
  • 資本主義が生み出した格差がモラルハザードを招いているのか。落語で読み解いてみた。

(立川 談慶:落語家、著述家、筋トレ愛好家)

「闇バイト」とは、高額な報酬を受け取る代わりに、犯罪行為を代行するアルバイトのこと。非合法な「悪事」とお手頃感覚の「バイト」という、本来結びつくはずもない2つが「悪魔合体」した格好でしょうか。SNSやインターネット掲示板、求人サイトなどで、「高収入」「高額報酬」「高額バイト」「簡単な仕事」などと甘い誘いで募集されています。

「ルフィ」と名乗っていたとされる今村容疑者(右)らをフィリピンから移送 =2023年2月撮影(写真:提供:Department of Justice/AP/アフロ)

 今年は「闇バイト」に関連し、全国で白昼堂々と犯行に及ぶ凶悪な強盗事件が相次ぎました。特に2月には「ルフィ」を名乗る指示役らの日本人4人がフィリピンの入管施設から強制送還され、逮捕された事件が話題になりました。

 30年以上続く不景気で、一般庶民の懐はずっと寂しい状態が続いています。片や、多額の報酬を稼ぐ一部のYouTuberなどがカリスマ的な存在になっています。経済的に苦しむ若者にとって、一見すると「割のよさそうな仕事」は喉から手が出るほどの「救い」に見えてしまうのかもしれません。まさに、ネット社会の現代を象徴する事件です。

(写真:アフロ)

 そんな「闇バイト」を予言しているかのような落語があります。『死神』という話です。主人公は、まさに人生が詰んでしまったような男です。

立川談慶(たてかわ・だんけい) 落語家。立川流真打ち。
1965年、長野県上田市生まれ。慶應義塾大学経済学部でマルクス経済学を専攻。卒業後、株式会社ワコールで3年間の勤務を経て、1991年に立川談志18番目の弟子として入門。前座名は「立川ワコール」。二つ目昇進を機に2000年、「立川談慶」を命名。2005年、真打ちに昇進。慶應義塾大学卒で初めての真打ちとなる。著書に『教養としての落語』(サンマーク出版)、『なぜ与太郎は頭のいい人よりうまくいくのか』(日本実業出版社)、『いつも同じお題なのに、なぜ落語家の話は面白いのか』(大和書房)、『大事なことはすべて立川談志に教わった』(ベストセラーズ)、『「めんどうくさい人」の接し方、かわし方』(PHP文庫)、小説家デビュー作となった『花は咲けども噺せども 神様がくれた高座』(PHP文芸文庫)、『落語で資本論 世知辛い資本主義社会のいなし方』など多数の“本書く派”落語家にして、ベンチプレスで100㎏を挙上する怪力。