中国・李克強前首相の死を悼み多くの人が献花した(写真:AP/アフロ)
  • 10月27日に突然死去した中国・李克強前首相が2日、火葬にされた。だが、その慌ただしさに疑念が広がっている。
  • 新華社の元ベテラン記者が書いたとされる、死因調査や公式の追悼セレモニーなどを求める陳述書がネットで拡散。著名中国ウォッチャーがそれを引用し話題となっている。
  • 習近平体制への不満を抱く民衆は少なくない。李克強の死は、中国混乱の時代の始まりかもしれない。

(福島香織:ジャーナリスト)

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 上海で静養中、突然心臓発作によって急死した中国の前首相・李克強の遺体は2日、慌ただしく火葬された。火葬前、八宝山の葬儀室で遺体告別が行われ、習近平を含む政治局常務委員たちが出席した。党と国家機関、省・自治区・直轄市政府機関、在外公館などは半旗をかかげ哀悼の意を示した。

 八宝山周辺や天安門広場周辺は地下鉄を含めた交通規制など厳しい厳戒態勢が敷かれていたが、少なからぬ人々が李克強の遺体を載せた車列を神妙に見送っていた。一方、北京在住の独立派ジャーナリスト・高瑜ら反体制派は八宝山に近づけないよう監視下に置かれていた。

 党や国家としての葬儀委員会は組織されず、公開の追悼式も行われなかった。11月28日の訃告(公式の訃報)の扱いも異様に小さいような気がした。江沢民死去のときは人民日報の赤い題字が黒にされ、紙面全体が喪に服した。

 だが、李克強の訃告があった日、メディアは相変わらず極彩色のままで、ネットメディアはトップからそそくさと李克強の訃告記事を外し、習近平が招集した政治局会議での新時代東北全面振興に関する政策意見についての記事をトップに報じていた。

 こうした葬儀の規格は2019年に死去した李鵬元首相と同じということらしい。だが、引退して16年以上たっている李鵬の死去と今年3月まで現役首相であった李克強の死去の扱いが同じなのか。

 李克強の死去について、多く人たちが疑念を持っていることは、すでにこのコラム欄で解説したが、あらためていくつかの謎について考えてみたい。