イスラエルによるガザ地区への空爆が続いている(写真:AP/アフロ)
  • イスラエルがガザに本格的に地上侵攻すれば、中東情勢が一層泥沼化するとの警戒感が高まっている。
  • イランから支援を受けているとされる武装組織「フーシ派」が、イスラエルに接近していたサウジアラビアの石油施設に攻撃を仕掛けるのではとの懸念もある。
  • ガザ侵攻で「イスラエル憎し」の感情がアラブ諸国に広がれば、イスラエルにあいまいな態度をとるアラブ諸国で政権への不満が高まり、民衆蜂起につながるとの見方もある。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが、イスラエルに大規模攻撃を実施してから2週間以上が経過した。これに対し、イスラエル軍はガザへの空爆を連日行っているが、当初想定されていたガザへの本格的な地上侵攻は今のところ実施されていない(24日15時時点)。米欧諸国が「ガザで拘束されている人質の解放を優先すべきだ」とイスラエル政府に強く要請しているからだとされている。
 
 中東地域の緊迫化を受けて原油価格は上昇した。

 1バレル=81ドル台にまで低下していた原油価格は10月7日以降上昇に転じ、一時、90ドル台に達した。その後、80ドル台後半で推移している。

 武力衝突の鎮静化のための外交努力で「中東地域からの原油供給が滞る」との懸念は足元で和らいでいる。だが「イスラエル軍の地上侵攻は時間の問題だ」との見方が一般的で、それにより中東情勢が一層緊迫化すれば、中東からの原油供給は大きなリスクにさらされることになる。

 中東の緊張状態は長期化する懸念が高まっている。このことは原油市場にどのような悪影響をもたらすのだろうか。

 「イスラエルとハマスの間に勃発した紛争の勝者はイランだ」との指摘がある*1。今回の紛争により、イスラエルとサウジアラビアというイランが嫌っていた両国の国交正常化交渉が暗礁に乗り上げたからだ。

*1イスラエルでもハマスでもない「この戦争の勝者はイランだけ」...想定される3つのシナリオとは?(10月19日付、ニューズウィーク日本版)

 米国政府は「ハマスの攻撃の影にイランがいる」としているが、直接の関与までは認めていない。イランも直接手を下せば、同国への制裁が強化され、好調な原油生産の妨げになってしまう。このため、イランが支援している同国の「代理勢力」が、イスラエルやその背後にいる米国に対する攻撃の前面に立ちつつある。