21世紀に入ると、中国のスタバは、空前の成功を収めていった。一時は故宮博物院の中や万里の長城の入口にもできたくらいで、「あら、ここにもスタバ」と思うほど増殖していった。

 昨年4月27日には、中国国内5000店目のオープンを、青島の万象城というショッピングモールで祝った。ちなみにスタバの日本の店舗数は1846店と、中国よりはるかに少ない(同社HPより)。

米中コーヒー戦争

 だが現在の中国は、「習近平新時代」。すなわち、何事も「国粋主義」でないと気が済まない時代である。「我が民族の資本によるコーヒーチェーン店はできないものか」という共産党の要望に応えるかのように、スタバの強力なライバルが出現した。

 それが、第19回中国共産党大会が開かれた2017年10月、北京の銀河SOHOにオープンした『瑞幸咖啡』だった。手掛けたのは、タクシー配車アプリ「神州租車」で大成功を収めた陸正耀董事長(会長)と、銭治亜総経理(社長)のコンビだった。この二人は、2004年から共同でビジネスを行っている。特に、1976年生まれと若い銭社長は、当時「美人社長」と、ひとしきり話題になった。

 私は、それから2カ月後の同年末に、北京で初めて『瑞幸』に入った。スタバの例の緑色のマークより斬新な、青と白の鹿のマーク。さらに極めつけは、「現金お断り」のシステムだった。スマホ決済オンリーなので、サクサクと会計ができて、スタバ名物の「長蛇の列」はなかった。

 コーヒーの値段も、スタバを意識して、若干安めに設定してある。しかも味は、スタバより上だった。

 さらに、オフィスの会議用需要を意識して、3杯以上の出前を同時に注文すると、1杯を無料で加えてくれた。つまりあらゆる意味で、スタバを超えていたのだ。