(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年7月28日付)

BRICSは中国が主導権を握る集まりになってしまった

 戦争犯罪の容疑で逮捕されるのを恐れて政府のトップが欠席する首脳会議など、そう多くはないはずだが、BRICSはそれをやってのけた。

 ウラジーミル・プーチンはヨハネスブルクで8月に開催されるブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国の首脳会議を欠席する。

 主催国である南アフリカは国際刑事裁判所(ICC)加盟国として、ウクライナにおけるロシアの行動について逮捕状が出ているプーチンが入国したら身柄を拘束しなければならないからだ。

BRICS内の深刻な偏り

 出席を見送ったプーチンが、中身のある政策を理解し損なうことは考えにくい。

 何しろ裕福な国々に対する反抗的な言葉遣いの数々を除けば、主要な議題の一つは中国の役割をめぐる、ほとんど隠されることのない緊張感だ。

 BRICSは今、深刻な偏りが生じているように見える。

 よく知られているように、もともとは大手金融機関ゴールドマン・サックスのエコノミストたちが2001年にマーケティングの道具として作ったグループ分けで、2009年にそのうちの4カ国(南アフリカは後から参加)が初めて首脳会議を開き、政治的な存在になった。

 BRICSについては、かつてカナダ政府の貿易部門で主任エコノミスト補佐を務め、現在はシンクタンクの国際ガバナンス・イノベーション・センター(CIGI)のシニアフェローであるダン・キュリアック氏が、その経済基盤を解き明かす論文を著している。

 これによると、BRICSが野心においても多少なりとも平等に見える集団になったのは、1990年代後半から2000年代にかけていろいろな出来事が偶然重なったからにすぎない。