(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年7月13日付)

日本を訪問したデサンティス氏(4月24日、写真:ロイター/アフロ)

 かつて、ビル・クリントンが部屋に入ってくると、そこにいる人がそれぞれに「自分に注目している」と思うとよく言われた。

 クリントンは究極のリテール政治家だった。人が好きで、有権者もそれを分かっていた。

 フロリダ州知事のロン・デサンティスが人前に姿を現すと、彼を支持したいと思っている人でさえ、自分が特に毛嫌いされているような気がする。

 カリスマ性の観点でブラックホールのような存在であること自体は、候補者の勝算にとって自動的に致命傷になるわけではない。

 しかし、相手が悪魔のようなカリスマ男のドナルド・トランプとなれば、大きなハンデになることは否めない。

共和党本命候補の呼び声が高かったはず

 2024年米大統領選挙の共和党指名候補の本命、あるいはそれに近い位置に付けていたデサンティスが、何年も見たことがない勢いで失速していることは、米国の保守主義者のものの見方を雄弁に物語っている。

 選挙運動を始めた当初、デサンティスはあらゆる面で優位に立っていた。資金は潤沢で、知名度もあり、強力な支援者がいた。

 トランプの代わりになれる唯一の共和党候補だという感じもあった。

 ところが、選挙運動では奇妙なほど失敗している。

 ある口さがない人物は、これでは「勃起不全(erectile dysfunction)」ならぬ「選挙不全(electile dysfunction)」だと揶揄した。

 理屈の上では、デサンティスを支持する根拠は非常に強力だった。