復旧と廃止を分けるもの

 2022年12月、JR東日本盛岡支社長は定例会見で、津軽線の復旧にこだわらず沿線自治体と協議を行いたいという趣旨の発表を行った。前年度の中小国と三厩間の赤字が5億8700万円にのぼるほか、復旧工事にかかる費用が6億円ほどと概算されたことで、路線の廃止も視野に入れていることをうかがわせるものだった。

 次の図は、JR東日本が2022年11月24日に発表した、2021年度の赤字路線のデータの一部だ。中小国から三厩までは、平均通過人員が1日500人以下となっている(赤線)。廃線の可能性が現実味を帯びる数字である。

 2023年に入って早々に、JR東日本盛岡支社は沿線自治体(今別町、外ヶ浜町)を対象に、津軽線存続についての住民説明会を開催。その後、3月には自治体の負担を含めて鉄道を維持するか、バスやタクシーなど別の輸送機関へ転換するか、青森県と自治体に2つの方向性が示されたが、その後の進展はないようだ。

 同じく昨年8月の大雨で被災したJR五能線も、深浦と鯵ヶ沢(両駅とも青森県)の間で不通となっていたが、同年12月23日に運転を再開した。被災状況から復旧には相当な期間を要するのではないかと推測していたが、思いのほか早い復旧だと感じた。

 先ほどの図では、深浦-鯵ヶ沢も赤線で示される赤字路線だ。それでも早期の復旧にこぎつけた理由の一つは、観光路線として一定の人気を得ていることがあるだろう。

 また、JR只見線は11年という年月と85億円(当初概算)という費用をかけて、2022年に復旧した。これも外国人を含めた観光利用を考慮したものだったと思われる。

只見線のキセキ、11年の長い年月を経てよみがえる橋と駅

 振り返って津軽線はどうだろうか。営業的な価値という意味では、貨物列車も走行する青森から中小国までは必要路線だろう。だがそこから先、三厩までの区間は観光利用があまり期待できなさそうだ。そうすると、「交通機関が鉄道であるべきか」という観点の議論は必要だろう。

 ただ、今回不通区間の駅を実際に訪ね歩いてみると、駅はまだ荒れた感じがなく、いつの日か列車が来るのを待っていることを強く感じた。その願いは叶うだろうか。