猛暑日が続く東京(写真:西村尚己/アフロ)

 ほぼ全国的に梅雨明けとなり、本格的な夏を迎えた。7月以降、各地で猛烈に気温が上昇しており、各地で熱中症による搬送者が急増している。近年の気温上昇は気候変動問題、特に地球温暖化問題と関連づけられることが一般的だが、「気候変動と酷暑の関係」について、ニッセイ基礎研究所主席研究員の篠原拓也氏がレポートする。(JBpress編集部)

温暖化によって発生頻度が高まる「熱波」

 近年の夏場の気温上昇について、気候変動の観点からはどんなことが示されているのだろうか。まずは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第1作業部会が2021年に公表した第6次評価報告書を見てみる*1

 この報告書には「○○年に一度」の極端な気象現象の発生頻度が高まってきていると示されているが、人為的かつ大規模な温暖化が始まったとされるのは、19世紀後半(1850~1900年)だ。近年は、その50年間に比べると、10年に一度の大雨が発生する確率が1.3倍、降水量は6.7%増加しているという。

 また、10年に一度発生していた干ばつが、5、6年ごとに発生する可能性があるとされた。

 それらのうち、「熱波」は他のすべての極端な現象よりも、温暖化に伴う発生頻度の増加が大きい。かつて一世紀の間に二度くらい起こるとされていた規模の熱波は、世界平均気温が産業革命以前に比べて1.5℃上昇する場合、約6年ごとに起こる可能性がある。そして、今後20年以内にその水準に達する可能性があるという。

 しかも、温暖化ガスの高排出シナリオ、つまり世界平均気温が4℃以上上昇する場合は、なんと、こうした熱波が1、2年ごとに起こるようになるとみられている。やはり、地球温暖化が進めば、暑い夏が訪れる頻度も増すことになるようだ。