ウクライナ軍の地対空ミサイル(ウクライナ軍が公開したYouTube動画より)

(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官)

 5月13日、ウクライナに近いロシア西部ブリャンスク州上空で、高性能攻撃機「Su-34」を含む複数のロシア軍機が相次いで撃墜されました。撃墜の事実が報じられた直後から、ウクライナ軍が地対空ミサイル(SAM)で迎撃したのではないかと言われていましたが、ウクライナ軍が公開した映像から、米国製パトリオットSAMによるものだったことが明らかになっています。

 公表されている情報は多くはありませんが、撃墜の状況と合わせると、ウクライナ軍がかなり大胆で緻密な作戦を実行したことが分かります。

 以下では、パトリオットの運用者(TD、TCO)だった筆者の経験を踏まえ、この迎撃作戦がどのようなものだったのか解説したいと思います。

ロシア軍が行っていた攻撃

 この迎撃作戦が実行された当時、ロシア軍が滑空爆弾を運用し、ウクライナ軍に被害を与えているとの情報が流れていました。ロシア軍が使用している滑空爆弾は、自衛隊も運用する米軍のJDAMに相当する「KAB-1500」だと見られています。

 KAB-1500には誘導方式や翼形状などにより複数のバージョンがありますが、この迎撃作戦時に使用されていたバージョンは不明です。一部の報道では、高高度から投下すれば40kmの滑空が可能な「UPAB-1500V」(KAB-1500のバージョンの1つ)だったとの情報もあります。

 5月13日の迎撃時、撃墜された機体は次の通りです。

・Su-34(戦闘爆撃機)×1
・Su-35(戦闘機)×1
・Mi-8MTPR-1(電子妨害ヘリ)×2
・Mi-8(汎用ヘリ)×1(おそらく、撃墜された際のパイロット救難用)