1on1は日本企業で一般化したものの……(提供:アフロ)
  • 1on1がうまくいかないと嘆く企業は少なくないが、そういう会社は上司が部下の話に耳を傾けるという文化がそもそもない場合が多い。
  • 率先垂範で自分がやってしまう上司、逆に過保護なまでに面倒を見てしまう上司は部下の成長の機会を阻害している。
  • 部下の成長の舞台を作るには、上司が部下の話を耳を傾ける風土に変えるにはどうすればいいのだろうか。

 上司と部下の間で行う1対1の定期的なミーティング「1on1」。評価のための人事面談とは異なり、部下の成長を支援するための人事施策として知られている。2012年にヤフーが人事制度の目玉として取り入れて以来、人材育成のトレンドの一つになった。今では、多くの企業で導入が進む。

 もっとも、1on1が一般的になる一方で、現場の上司からは「どう接すればいいか分からない」「うまく機能しない」という声もしばしば挙がる。なぜ1on1が機能しないのか。ヤフーの人事本部長として1on1を導入した本間浩輔氏(Zホールディングス・シニアアドバイザー)が見る、間違いだらけの1on1とは──。

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(本間 浩輔:Zホールディングス シニアアドバイザー)

 従来の日本企業は上意下達、チーム一丸となって業績に貢献することが是であり、それが日本企業の強さとされてきました。人材育成という観点でも、上司は部下に仕事のやり方を指示したり、成果が出なければ問題点を指摘したり、それでも成果がでなければ、自ら部下の仕事を奪ってタスクをこなす率先垂範型がよしとされてきました。「説明するより、自分でやった方が早い」という声は、その典型例であったと思います。

 こういう文化が組織を支配しているため、上司が部下の話に耳を傾けるという習慣がそもそもないという企業は数多く存在します。上司にしてみれば、かつて部下だったときに上司から話を聞いてもらい育成された経験がありませんから、上司になって部下の話をきくことができるわけがありません。

 1対1で話す機会は面談か昇給、賞与のフィードバックぐらい。忙しくて部下の話を聞く時間などない。自分の方が業務に精通しているのに部下の話を聞く意味があるのか、と考えている上司もいます。自分はあくまでも指導する側という感覚です。

 でも、1on1は部下の話に耳を方向け、コミュニケーションを通して部下が内省し、気づきを得るように導くための仕組みです。部下の話を聞かなければ成立しません。つまり、「1on1がうまくいかない」と嘆いている会社は1on1を導入するための素地ができていないんです。