(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年4月26日付)

中国はどこかの国のように脅せばすぐに従う相手ではない

 米国と中国の関係が21世紀の人類の運命を決めることになりそうだ。

 平和と繁栄、そして地球環境の保護が進む時代になるか、その逆になるかが決まる。

 もし後者になったら、未来の歴史家たち(その頃にそういう人が存在していたらの話だが)は間違いなく、自分たちの愚かさから身を守れない人類の無能さに驚嘆するだろう。

 ただ幸いなことに、今ならまだ、人類は災厄を防ぐ行動を取ることができる。これは多くの分野について言えることだ。

 経済もその一つだ。では、我々がますます困難な将来に直面するなかで経済関係をうまく管理するには、果たしてどうすればよいのだろうか。

 米国のジャネット・イエレン財務長官と欧州連合(EU)のウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長は先日、このテーマについて思慮に富んだ発言をした。

 だが、こうしたコメントは実現可能な将来像を描いただろうか。これについては残念ながら、筆者は懐疑的だ。

イエレン長官が唱える「建設的関与」

 イエレン氏は、「建設的関与」なるもののための計画を提示した。これには3つの要素がある。

 まず「我々と同盟国、そしてパートナーの国家安全保障上の利益を確保し、人権を守る」こと、次に「公正な」競争に基づく「健全な経済関係を追求する」こと、そして「今日の世界が直面する喫緊の難題について協力することを目指す」ことが柱となる。

 このうち1本目の柱については、米国の「国家安全保障にかかる行動は、我が国が経済競争上の優位に立つために設計されたものではなく、中国の経済的・技術的な近代化を阻止するためのものでもない」と述べている。

 ただし問題は、筆者が先日北京に短期間滞在して知ったように、中国ではそのように全く思われていないことだ。

 重要な安全保障についてのイエレン氏の議論は、それがどれほど対処しづらい問題になりそうかを浮き彫りにしている。