(英エコノミスト誌 2023年2月25日号)

ミュンヘン安全保障会議に出席した中国の外交トップ、王毅氏(2月18日、写真:AP/アフロ)

ロシアに対する中国の支援は、米中の対立を燃え上がらせる恐れがある。

 象徴的な意味はこの上なく明確だった。

 米国と中国が新たな冷戦の方向にゆっくりと流されていくなか、ウクライナでの紛争はこの二大大国の代理戦争、そしてライバル関係にある2つの思想体系の代理戦争の様相を強めてきた。

 このため2月20日、中国外交トップの王毅氏がロシアを訪れたのと同じ日に、米国のジョー・バイデン大統領がウクライナの首都キーウ(キエフ)に姿を現したのは適切だった。

 不安定性を嫌う中国は恐らく、ロシアによる残虐なウクライナ侵攻を歓迎しなかったが、戦争を最大限に利用し、西側諸国の団結にくさびを打ち込もうとしている。

 極秘に計画されたバイデン氏の訪問は、西側の決意を示すことを意図していた。

侵攻1周年を取り巻く中国の外交攻勢

 これらはすべて、侵攻から1年が経過し、中国の外交活動が活発化しているなかでの出来事だ。

 王氏は2月18日にミュンヘン安全保障会議に出席し、中国が和平案を提示する方針を明らかにした。

 中国政府はその数日後に「グローバル安全保障イニシアティブ(GSI)」なる文書を再び公表した。

 中国共産党語法で書かれた3500語近いもので、他国の主権や領土の一体性を尊重せよとの呼びかけで埋め尽くされている。

 ロシアの仲間から出てきたことを考えれば、奇妙な文書だ。

 中国の習近平国家主席は2月24日に、ウラジーミル・プーチン大統領による侵攻1周年のその日に「平和演説」を行うと見られていた。

 こうした取り組みは、欧米の政府当局者には空しく響く。

 プーチン氏が侵攻を始めるほんの数週間前に、習氏はロシアとの「限界なき」パートナーシップに同意していた。王氏はモスクワ滞在中に、両国関係は依然「盤石」だと述べている。

 中国はこの戦争については中立の立場だと話しているが、実は親ロシアの偽中立だ。

 北京の政府当局者はこの1年、クレムリンの主張を売り込んできた。中国は米国が自国の武器商人の利益を増やすために戦いを長期化させていると批判している。

 米国政府当局者によれば、中国企業は兵器以外の支援をロシアに行ってきた。

 アントニー・ブリンケン米国務長官はミュンヘンで、中国はプーチン政権に武器や弾薬を提供することを検討中だと警告した。