IOCのトーマス・バッハ会長。2022年12月のIOC理事会にて(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 何が何でも「札幌」で押し切りたいということなのか。2030年の冬季五輪・パラリンピック開催地決定時期について、IOC(国際オリンピック委員会)が12月6日の理事会で再び延期を決めた。

 再延期の理由は、温暖化に伴う気温上昇によって冬季五輪の開催可能な都市が減少していることから、選定作業の抜本的な見直しを時間を費やしながら検討していくためとしている。30年冬季五輪の開催地が正式に決められるIOC総会は今年10月にも開催時期を「来年5~6月から同9~10月に延期する」と発表しており、これが2度目の延期となる。しかも今度の延期は無期限だ。

冬季五輪の開催地は特定都市で「持ち回り」に?

 冬季五輪開催地のあり方を議論する流れの中で浮上してきているのが「持ち回り開催プラン」だ。冬季五輪の開催地を特定の都市と地域のみに限定し、これまでのような立候補制を基軸とする選考を撤廃しようというものである。しかし実現にはハードルが高く「そもそも定期的に冬季五輪を開催したい都市が数多くあるのか」との声も飛び交う。

 いずれにせよ、IOCの理事会側は今回の無期限延期決定と並行し、舞台裏で将来開催地委員会から冬季五輪開催地の条件として「雪上競技会場での平均最低気温が氷点下であることを10年以上証明する必要がある」と提言されたとわざわざ明かすなど、各候補都市の“無忖度”なデータ収集や気候変動への対応策協議を今後優先していく方針をことさら強調している。

 ただ、どうも腑に落ちない。気候変動云々の延期理由や将来開催地委員会から開催地の条件を求められた水面下の出来事をあえて明かしたこと、さらに現時点では実現性の低い「持ち回り開催プラン」をチラつかせるなどIOC側の“挙動”には不自然なところや焦燥感が随所に感じられる。