大統領選への出馬を表明したトランプ氏(写真:AP/アフロ)

(山中 俊之:著述家/芸術文化観光専門職大学教授)

 トランプ劇場の第二幕が始まってしまった。

 11月15日、トランプ氏はフロリダの豪華な邸宅「マー・ア・ラゴ」で、星条旗で飾られた壁を背景に2024年の大統領選挙への出馬を表明した。

 米国の中間選挙では、下院では共和党が過半数を奪還したが、上院では民主党が多数派を維持した。

 特に、インフレが進行して人々の生活が脅かされている中での選挙であることを考えれば、バイデン政権は国民の支持をなんとかつなぎとめたと言えるのではないだろうか。

 にもかかわらず、トランプ氏は大統領選挙に出馬表明した。

 共和党内からは、中間選挙におけるトランプ氏の責任論が聞こえている。今後、フロリダ州のデサンティス知事など共和党の他の可能性のある候補者の動向に目が離せない状況だ。

 向かい風を受けながらも強いリーダーを演出するトランプ氏。機密文書の持ち出し疑惑等がある同氏にとって、司法からの捜査から目をそらさせるためにも、大統領選挙への出馬表明をせざるをえなかったという方が正確かもしれない。

 いずれにしてもトランプ劇場の第二幕の緞帳が上がってしまった。

 トランプ氏は、民主党への政治的な攻撃だけでなく、人種差別を助長しかねない発言を何度も繰り返してきた。

 例えば、メキシコから国境を越える人々に対して、「犯罪者、レイピスト」と発言している。

 また、ハイチやエルサルバドル、アフリカの国々を「肥だめ」や「屋外の便所」といった「不潔な場所」を意味する「shithole」と呼び、米国はノルウェーのような国からの移民をもっと受け入れるべきだと発言した。

 大統領就任前の経営者としては、黒人従業員を差別してきたとも言われる。

 現在は、ソーシャルメディアで人種差別的発言をしただけで解雇されうる時代だ。にもかかわらず、大統領がこのような発言をしてきているのだ。

 国家元首にして人種差別的発言の百貨店と呼ぶにふさわしい。