昨年8月7日、東京五輪の野球決勝で先制ソロアーチを放ち、侍ジャパンの金メダル獲得に貢献した村上宗隆選手(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 これ以上ない“村神様”の「劇的アーチ」だった。東京ヤクルトスワローズの村上宗隆内野手が10月3日に本拠地・神宮球場で行われたレギュラーシーズン最終戦の横浜DeNAベイスターズ戦で日本選手シーズン最多となる56号本塁打を放った。

 9月13日の巨人戦(神宮)で2本塁打を放って1964年に王貞治氏(巨人)がマークした日本選手記録の55本に並んでから15試合61打席ぶりの一発。図らずも今季最後のバッターボックスとなった7回先頭の第4打席で、相手の5番手・入江大生投手の投じた初球151キロの内角高め直球をバットの芯でとらえ、本拠地で大勢の燕党が陣取った右翼席中段へ叩き込んだ。

 打った瞬間、本塁打を確信して右手の人差し指を突き上げると一塁側のヤクルトベンチへ向けて両拳を握り締めながらガッツポーズ。ゆっくりとダイヤモンドを一周し、ベンチ前で一礼した燕の若き主砲には満員に膨れ上がった神宮球場のスタンドから万雷の拍手が沸き起こった。

漫画でもなかなか描けない劇的場面

 かつて王氏と同じく55本を記録したタフィー・ローズ(近鉄・2001年)とアレックス・カブレラ(西武・2002年)の助っ人大砲レジェンド2人も完全に抜き去り、NPBシーズン本塁打歴代単独2位へ一気に躍り出た。元チームメートで先輩のウラジミール・バレンティン(ヤクルト・2013年)の持つNPBシーズン本塁打記録の60本には残念ながら到達できなかったとはいえ、今季の村上がそれに匹敵もとい、凌駕するほどのインパクトを残したことに異論などあるはずもない。

2013年11月、その年のシーズンで60本塁打をマークした東京ヤクルトスワローズのウラジミール・バレンティン選手が故郷のオランダ領キュラソー島で凱旋パレードした(写真:アフロ)

 今季レギュラーシーズン最終戦でメモリアル弾の1本塁打を含む4打数2安打1打点。打率3割1分8厘、134打点、56本塁打で打撃3部門のトップとなり、令和初、史上最年少の三冠王獲得も決めた。