(写真:アフロ)

(大西康之:ジャーナリスト)

 学校給食、社員食堂、病院、介護施設向けのフードサービス事業を展開するシダックスの経営が揺れている。外食関連のベンチャーや投資ファンドの名前が乱れ飛ぶ新聞報道だけでは、何が起きているのか全く分からない。背後にある複雑な人間模様に注目しないと駆け引きの本質は見えてこない。

 シダックスの現状を事実関係で書けば以下のようになる。

 今年6月、有機野菜の宅配などを手がけるオイシックス・ラ・大地がシダックス創業家(志太勤取締役最高顧問と志太勤一代表取締役会長兼社長)との合意に基づいてTOB(株式公開買付)を開始した。

 シダックスの取締役会がこれに反対。9月には外食大手のコロワイドが主力事業の買収に名乗りを上げたが、わずか2週間で提案を取り下げた。大株主である創業家はオイシックスとの資本提携を望んでいるが、シダックスは9月15日、「コロワイド社からの提案の取り下げは、当社の意見表明(TOBに反対)に何ら影響を及ぼすものではありません」とのリリースを出した。シダックスの大株主で投資ファンドのユニゾン・キャピタルも反対している。

 何が起きているのかを知るためには、時計の針を3年前に戻す必要がある。

創業家とユニゾンとの契約に盛り込まれていたコールオプション

 2019年、拙速な業容拡大で業績不振に陥ったシダックスは、創業者の勤氏から経営を引き継いだ社長の志太勤一氏は大学の同窓の柴山慎一氏に助けを求めた。現シダックス取締役専務執行役員の柴山氏は、野村総合研究所(NRI)で広報部長、総務部長を務めNRIみらいの社長も務めた経営コンサルタントだ。

 5月になるとユニゾンが40億円を出資して経営支援に乗り出した。ユニゾン代表取締役の川崎達生氏が自らシダックス取締役に就任し、柴山氏と組んで経営再建に臨んだ。