画像出典:『マンガでやさしくわかる知識創造』

 AIの普及により、多くの人間の仕事が取って代わられることが懸念され、近年は「ChatGPT」の登場で生成AIが脚光を浴びている。しかし、AIには「新しい知識(ナレッジ)を創り出すこと=知識創造」はできない。これができるのは人間だけだ。生身の身体を持ち、五感を使って経験から意識的に学べるからこそ、人間には知識創造が可能であり、生成AI隆盛の時代だからこそ、知識創造はビジネスパーソンの重要なスキルとなる。本連載では、『マンガでやさしくわかる知識創造』(西原〈廣瀬〉文乃著/藤沢涼生作画/日本能率協会マネジメントセンター)から内容の一部を抜粋・再編集。誰もがすぐに実践できる知識創造の考え方についてマンガを交えながら紹介する。

 第3回は、知識創造の3つの効果について解説する。

<連載ラインアップ>
第1回 社内の課題を一発解決、若手経理部員がつくった“図書館”の役目とは?
第2回 なぜ、多くの人が「自分は知識を創っていない」と思い込んでしまうのか?
■第3回 組織の中で知識を創り、共有することで生まれる3つの効果とは?(本稿)
第4回 なぜ、あの居酒屋チェーンの「つくね」は、どの店で食べてもおいしいのか?
■第5回 「ジャパンアズナンバーワン」 と賞された日本企業の強さの秘密は何だったのか(5月21日公開)
■第6回 なぜ、業務を「見える化」してKPIで測ると、人は違和感を覚えるのか?(5月28日公開)
■第7回 創造と蓄積をどう繰り返す? 知識創造理論の中心「SECIモデル」とは?(6月4日公開)


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マンガでやさしくわかる知識創造』(日本能率協会マネジメントセンター )

■ ① 組織が変わる

 1つめの効果は、組織が変わるということです。

 新しい知識は、たった1人の人によって創られるのではなく、チームやグループ、組織、社会のように、人と人が、置かれた環境からの影響も受けながら、互いにかかわり合う中で創られます。そして、新たな知識を創るには、まずは個人と個人が互いを ――その違いも含めて――受け容(い)れ、対話を行って、思いつきやアイデアを出し合うことが必要です。

 逆にいうと、組織のメンバーが互いに共感し合えない、互いに受け容れ合えないような組織では、新しい知識を創ることは難しくなります。

 したがって、新しい知識を創り出せている組織は、それまでよりももっと互いに共感し合い、互いを受け容れ合える組織になっているといえます。

 つまり、新しい知識を創り出すことによって、より強靭(きょうじん)(レジリエント)な組織になっていくといえます。

■ ② リーダーが育つ

 2つめの効果は、リーダーが育つということです。

 新しい知識を創るためには、そのためのプロセスが進むように場を整えたり、自ら判断し行動してメンバーに影響を与えたりする必要があります。

 そうした役割を担うのはリーダーです。知識創造理論では、ワイズ(フロネティック)リーダー、知創(ちそう)リーダーなどと呼びます。

 ところで、みなさんの「リーダー」のイメージはどんな感じでしょうか?

 ワイズリーダーは、「ついてこい!」と指示や命令をするような、カリスマ性によって部下やチームメンバーを力強く引っ張っていくタイプのリーダーではありません。

 むしろ、「一緒にやろう!」と声をかけるような、チームの目標を達成するためにメンバーや関係する人たちにさまざまな影響を与えるタイプのリーダーです。

 しかも、全員がこうしたリーダーになることができ、時と場合によってリーダーになったりフォロワーになったりと役割を変えながら、チーム目標の達成を目指します。

 つまり、新しい知識を創り出していく中で、リーダーシップの能力を身につけていき、全員がリーダーとなっていくことになります。