ロングシートで料理を楽しむなど、グルメ列車はバリエーションが広がっている。写真は明知鉄道(写真:池口英司、以下も)

前回の記事「日本の鉄道で見直される食堂車、122年の栄枯盛衰」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71275)で日本の鉄道の食堂車を取り上げた。姿を消した従来の食堂車に代わって、いま、列車の中で食事を楽しめる「グルメ列車」が全国で運転されている。その数は30本以上となり、まさに百花繚乱の趣だ。これらの列車はどれも、地産地消の食材を活かし、提供される食事も客室設備も個性豊かになっている。今回はそんなグルメ列車の中から個性あるいくつかの列車を紹介しよう。

(池口 英司:鉄道ライター・カメラマン)

鉄道好きの内田百閒も食堂車を愛した

 昭和30年代中盤から昭和40年代にかけて、全国を走る主要な列車には食堂車が連結されていて、長距離を走る列車のシンボル的存在となっていた。提供されるメニューは限られたものであったが、窓の外を流れる見知らぬ土地の風景を眺めながらの食事には、他の交通機関では味わうことのできない、鉄道旅行の楽しさがあった。

 そんな食堂車も、時代が2000(平成12)年を迎える頃には、ほとんどすべてが姿を消してしまった。利用客の回転が悪く、採算性の乏しい食堂車は、鉄道事業者にとって、悩みの種となっていたことも事実だった。

 けれども、日本のほとんどの列車から食堂車が姿を消してしまうと、今度はこれを懐かしみ、いま一度列車の中での食事を楽しもうという機運が生まれる。それは蒸気機関車(SL)の復活劇にも似た構図であった。

「僕は食堂車の中で食べるものは全部美味しい」と言ったのは作家の内田百閒だが、食堂車の食事に鉄道旅行の醍醐味があることを、旅行好きの人たちは忘れていなかったのである。

 こうした時代背景の下に、各地で新時代の食堂車とでも呼びたくなる車両の運転が始まった。

 食堂車復活のきっかけをつくったのが、2013(平成25)年3月に登場した、近鉄特急「しまかぜ」のカフェ車両だろうか。