ロシア軍のミサイル攻撃を受けたウクライナ北東部の街ハリコフ(3月1日、写真:ロイター/アフロ)

 ロシアのウクライナ侵攻に関連して、連日様々なニュースが報じられます。

 理由のいかんを問わず、今回の武力侵攻は国際法に抵触する可能性が高く、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が戦争終結後まで存命だった場合には、戦争責任が問われる可能性が考えられるでしょう。

 そうしたなか「ロシアに焦りか?」「ジュネーブ条約で禁止されている」「人の臓器を無差別破壊する真空爆弾を使用」(https://news.yahoo.co.jp/articles/0b62f392e20722836d3e04500c7ea28efe866802)という報道と、それに付された、かなり誤った解説を目にしました。

 科学云々以前に「爆発時に発生する高い圧力波は人の内部器官に損傷を与えるという。」「軍人と民間人を区別しないほど無差別的で破壊力が強い」といった表記は、そもそも意味が通じません。

 いったい「軍人と民間人を区別」する破壊力とは何か?

 ターゲットを指定するドローンとの比較でもあるまい。まともな報道になっていない。

 紙幅を割く意味がないのでこれ以上触れませんが、このような報道がネット上に流れること自体に、危惧感を抱きました。

 そもそも「ロシアが焦り」でこうした兵器を使うわけもなく、戦争に関してはとりわけ正確な報道の必要を痛感します。

 ちなみにロイター電(https://www.reuters.com/world/europe/ukraines-ambassador-us-says-russia-used-vacuum-bomb-monday-2022-02-28/)にはそのような内容は記されていません。

 むしろ原記事にあるクラスター爆弾、民間人が退避していた未就学児童向けのプレスクールなどの重要な記載が省略されていました。

 以下では2月28日、ロシア側が使用した報じられる「サーモバリック爆弾」(あるいは「燃料気化爆弾」)について、まず物理の観点から、続いて戦略的な観点から検討してみます。