第7回香港立法会選挙で開票箱を開ける関係者(出所:香港政府新聞処)

 中国政府が香港を着々と作り替えている。第7回香港立法会選挙が12月19日に実施された。定員90席のうち「建制派」と呼ばれる親中派が89議席を獲得した一方、中間派や民主派の「非建制派」は1議席の獲得にとどまり、事前の予想通り親中派が圧勝した。一般市民の投票による地区選挙枠(20議席分)の投票率は、前回2016年の58.3%を大きく下回る30.2%と過去最低を記録した。議会に対する香港市民の不信任を示す形となったが、低投票率は親中派候補者に有利に働くことにもなった。(高橋 清:ジャーナリスト)

強大な権力を持つ「選挙委員会」

 香港の新しい選挙制度は、中国の国会にあたる「全国人民代表大会」(全人代)の常務委員会が2021年3月30日に可決し、翌3月31日から施行された。1国2制度ゆえ、香港は通常、中国本土とは別の独自の法律を制定しているが、全人代は「付属文章」を書き加える形または付け加える形で香港の法律を制定することが可能となっている。新選挙制度も香港国家安全維持法も、これを通して法制化された。

 しかも新選挙制度はタイミングの妙がある。香港では2019年に逃亡犯条例改正案に反対するデモが発生したが、その年に行われた区議会選挙で民主派が約8割の議席を占め圧勝した。中国政府は「民意を反映する選挙制度は危険」ということを再認識した。2020年9月に開催予定だった立法会選挙は新型コロナウイルス感染拡大で翌年9月に延期された。延期している間に、全人代は急いで新選挙制度を制定したのである(新制度では「選挙委員会枠」を確定させなけなければないことから、9月19日に先に選挙委員会選を実施し、立法会選挙は12月19日に再延期する形をとった)。

 新しい制度は、1500人から成る「選挙委員会」が肝となる。選挙委員会はこれまで1200人だったが、今回から1500人に増員された。