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※本記事はPublicLab(パブラボ)に掲載された「共創をデザインする逆公募型プロポーザル、誕生(1)~(5)」を再構成したものです

(伊藤大貴:株式会社Public dots & Company代表取締役)

 企業が社会課題を設定し、それに対する政策的アプローチやアイデアを自治体に求め、最も優れた提案に対して寄付受納という仕組みで企業が自治体に資金を提供する──。それが逆公募型プロポーザルです。前回「発想を逆転!企業が公募し自治体が提案する仕組み」では、現状の官民連携の問題点を整理し、私たちが逆公募型プロポーザルを思い付いた経緯をご紹介しました。

 今回は、企業が今抱えている悩みに対して逆公募型プロポーザルはどういう解決アプローチが可能なのかを解説し、日本初の逆公募型プロポーザルに名乗りを上げた、イーデザイン損害保険株式会社のプロジェクトの詳細をお伝えします。

従来型の公募プロポーザルと逆方向の「逆公募型プロポーザル」
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企業がオープンイノベーションにかじを切るワケ

 今、日本の行政は明らかにイノベーションが求められています。従来の方法では行政運営が難しくなっているからです。私たち株式会社Public dots & Companyが「『公共』を再定義する。」というミッションを掲げているのも同様の理由で、公共の担い手が従来は行政だけだったのが、これからは企業や市民など多様化していく、そのデザインが今始まろうとしています。

 逆公募型プロポーザルもその一環ですが、自治体と企業の共創をデザインするに当たって、企業側が抱えている課題についても整理しておく必要があります。それは「真の課題を見つけられない」という悩みです。

「えっ?」と思われる方もいると思います。四半期決算で、日々株主への説明が求められながら、事業計画を遂行していく企業。常に新しい価値提供をしていかないと、マーケットからは評価されない、そんな厳しい世界でビジネスを繰り広げるのが企業。そう考えている人にとっては、企業が真の課題を見つけられなくなっていると聞くと、意外に思うかもしれません。

 しかし、よく考えると不思議ではありません。今の業績は過去に積み上げてきたイノベーションと、そこから生まれた信頼がベースになったものです。誤解を恐れずに言えば、過去の資産で食べているようなもの。それ自体は素晴らしいことですが、一方でここ数年の社会のデジタル化に伴ってルールチェンジャーが現れると、事業の根幹が一気に崩れるということが起きつつあります。