今回、東北で津波の被害を受けた地域は、津波に対して巨大な防波堤を整備し、備えをしていました。しかし、約1100年前に宮城県沖で発生した、マグニチュード8以上と推定されている「貞観(じょうがん)地震」と同程度の巨大地震が発生し、多くの町が廃墟となってしまいました。いわば「1000年に一度」の災害が発生したわけです。
これまで公共工事では、「100年に一度の洪水に対応するため」とか、「いや、200年に一度の洪水に対応するための備えが必要だ」という議論もなされていました。
けれども、「洪水が絶対に発生しないようにする」とか「マグニチュード9の地震にも対応できるように施設を整備する」という発想そのものを見直さなければならない時期に来ているのではないでしょうか。
被害を受けた地域は「安全な場所」で復旧を
従来の発想の延長で今回の地震の復旧を進めていくと、「これまでの堤防は高さが10メートルだったから、今度は高さ15メートルの津波にも耐えられる堤防を造ろう」ということになるでしょう。しかし、今回のような高さ20メートルを越える津波にも耐えられる堤防を整備するためには、莫大なお金がかかります。
日本は人口の減少が始まり、老人ホームの整備や医療費の手当がますます必要になっています。その中で、どこまで「万が一」を想定して公共投資をするのか、という難しい検討を避けては通れません。
今回の震災では、ある被害を受けた町の市長さんが、「低地の集落はまとめて高台に移転すべし。住宅地は自治体が買い上げる」という考えを提案していますが、うなずけるところがあります。
海沿いの集落は、元通り復旧するのではなく、ダムの水没地が集団で移転するように、ある程度の高台に集落ごと移転すべきだと思います。
「低層の木造住宅ではなく高層の鉄筋コンクリートの共同施設を建設すべし」という意見もあります。これも検討に値すると思います。