海兵隊自身は、すでに25年ほど前から新型車両の開発に着手していた。しかし、ようやく誕生した新型車両(EFV)はあまりにも高額になってしまった上に、車両自体にも問題点も山積していたため、開発は中止に追い込まれた。そのため、海兵隊はおよそ1300両保有するAAV-7のうち、とりあえずは400両程度に様々な改造を施して、これから15年程度は使い続ける決断を下した。これがAAV-7延命改修プログラムである。

 ところが、すでにアメリカの装甲車両メーカーによって改造作業が開始されている延命改修に、海兵隊自身がキャンセルの注文を発するという異常事態が生じてしまった(そのため、このメーカーでは多数の失業者が生じている)。これは、予想されうる中国との島嶼を巡る攻防戦には、もはやエリス中佐が打ち出して以来80年近くにわたって海兵隊の基本的ドクトリンの1つとされてきた上陸作戦は「さして役には立たないであろう」と海兵隊司令部自身が判断している何よりもの証拠である。それゆえに、AAV-7の防御力増強や機動性強化をはじめとする改修作業を中止してしまったのである。

揚陸艦から発進して海岸に上陸した米海兵隊AAV-7(筆者撮影)

日本も現実を直視せよ

 中国との「大国間角逐」に打ち勝つ決意を固めた米軍は、予想されうる南シナ海や東シナ海での島嶼攻防戦に打ち勝つための具体的調整を開始した。そして、もはや空母決戦や艦隊決戦、上陸作戦といった“第2次世界大戦スタイル”の戦闘は現代島嶼攻防戦では再現しないことを大前提にしている。現在の情報システム環境や兵器システムのレベルから考察すると、このような前提は至当な判断と言えよう。

 ただでさえ国防予算規模が微少にすぎる日本としては、海兵隊の苦渋の決断のように、少しでも無駄な装備調達を控え、必要性の低い組織を少数精鋭化するなどの、我が身を切る英断を実施する勇気を持たねばならない。