1 繰り返す不思議な海空重視議論
繰り返す不思議な海空重視議論は、5年前の防衛大綱の時も激しかった。
それは「海空自衛隊が健在であれば、日本の防衛は盤石だ」「陸上自衛隊は人数だけは多いが、有事役に立たない無駄な組織だ」というものだ。
そして、「陸自から予算と人を巻き上げ、海空自に投資すべきだ」という議論が噴き出し、防衛省もその議論に引っ張られたことだ。
それは間違っている。間違っている以上に、この国の防衛を弱体化し、同盟国として共同作戦を行う米国の期待を裏切る亡国論である。
そもそも平時と有事における陸海空自および米軍の役割や態勢そして軍種の動きの違いが分からないことから、これが誤解や混乱に拍車をかけている。
論ずべきは有事の役割と態勢、動きである。後述するが日米とも、平時、有事では全く異なるのである。
それなのになぜ、議論を矮小化し陸海空のシェア争いに結びつけるのだろうか。どこの国でも、自国の脅威が増大すると国防予算を大きく増額するものだ。
10年単位でみると、軍事的脅威の「本丸」である中国は、確実に米国をアジアから追い払うことに専念している。
一方の米国はこれを許すまじと、過去9年で最大規模となる80兆円(日本の平成30年度国家予算の82%相当額)の国防予算を決め、すでに本格的な貿易戦争を開始している。
この間、日本よりもはるかに脅威が少ないNATO(北大西洋条約機構)が軍事費をGDP(国内総生産)比2%に増額しようとしている。
しかし、アジアでは日本だけが防衛費を1%程度に抑え、実態のない日中関係改善に浮かれ、中国が世界的覇権を目指す「一帯一路」に協力しようとしている。
これは日米同盟を基軸とすると言う日本の基本政策に逆行していないだろうか。