いずれにせよ、核戦争や第3次世界大戦のような全面戦争を避けたうえでの中国との軍事的衝突ということになれば、局地的軍事衝突ということになる。

 たとえば小規模なものでは南沙諸島や尖閣諸島などの無人島嶼環礁の争奪戦、より規模が拡大して南沙諸島に中国が築いている人工島のような軍事拠点の攻防戦、さらに規模が拡大すると宮古島や石垣島のような有人島への侵攻戦、そして最大規模で台湾攻防戦といった局地限定戦争の可能性が考えられる(もちろんそれらの軍事衝突の発生確率は極めて低く、「否定され得ない」といった表現のほうが妥当かもしれない)。

「太平洋戦争」とは似て非なる中国との島嶼攻防戦

 要するに、中国との間で予想されうる軍事衝突は、規模の大小はあるものの島嶼攻防戦になることが確実である。

 島嶼環礁を巡っての軍事衝突という点で想起されるのは、米国が呼ぶところの「太平洋戦争」である。日本と米国は太平洋の島嶼環礁を巡り死闘を繰り広げ、沖縄攻防戦で日米島嶼攻防戦は幕を閉じた(実際に海兵隊や海軍関係者たちの中には、日本との島嶼攻防戦を“再吟味”して、来たるべき中国との島嶼攻防戦に役立つかもしれない何らかの教訓を再確認する動きも見られる)。

 しかしながら似通っているのは、戦域が島嶼環礁とその周辺海域ならびに空域となるであろうという点だけである。1940年代と違って高度情報化時代の現在は、サイバー戦、宇宙戦など1940年代には思いもよらなかった概念も登場している。さらに、軍艦や軍用機などの伝統的な兵器も各種センサー類(レーダーやソナー)や高性能ミサイルなどの登場により著しく進化し、海戦や空戦そのものの概念自体が大きく変貌してしまった。