マレーシアの民主化運動を長年、引っ張ってきたアジアのカリスマ指導者、アンワル・イブラヒム元副首相(71歳、以下アンワル氏)が(連邦憲法下では11月11日までに実施)早ければ来月にも行われる下院(連邦議会)補選に出馬し、念願の国政復帰を目指すことが12日、明らかになった。
アンワル氏が自ら設立し、5月の選挙で与党連合(希望同盟)の最大政党となった人民正義党(PKR)が同日、記者会見で正式発表したもので、同党の現職下院議員が辞職する形で、アンワル氏に選挙区を譲り、補選が実現することになった。
アンワル氏は同日、滞在先の香港で地元メディアの取材を受け、国会議員への返り咲きに意欲を見せた。
「選挙区(マレーシア中部、ヌグリスンビラン州ポート・ディクソン。日本人にも人気の首都・クアラルンプール近郊のリゾート地)を譲ってくれると申し出た下院議員に深い信頼を抱き、出馬を決めた。その地盤を引継ぎ、新政権の基盤を強化したい」
5月に61年ぶりに実現したマレーシアの政権交代の裏には、獄中の身だったアンワル氏(選挙後、国王による恩赦で釈放)とかつて政敵だったマハティール現首相との和解による打倒ナジブ政権の野党連合による共闘があった。
選挙の共闘条件では、マハティール首相がアンワル氏に同首相就任後2年以内に、アンワル氏に首相職を禅譲することになっており、マレーシアでは、首相就任の条件が、下院議員か、国王の任命による上院議員に限られている。
アンワル氏は、今回の補選で勝利して首相就任の要件を満たし、早期に国政復帰を目指すと共に、11月に実施の人民正義党の党代表選挙では正式に総裁に就任する見通し。
マハティール首相から首相の座を禅譲される時期を視野に入れ、最大与党の同党と自らの政治家としての支持基盤の強化を図る狙いがある。
国王の恩赦で約3年ぶりに釈放され、5月末、日本のメディアで初めて筆者の単独インタビューに応じたアンワル氏は、「2、3カ月後ぐらいには、下院の補選に出馬し、国会議員に就任する意向だ」と下院補選の時期について初めて公式に表明していた。
( 「マレーシア”陰の首相” 戦略的パートナー日本に期待」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53166)
一方、5月の政権交代以来、ナジブ政権下の汚職追及・訴追、不利益な中国主導の一帯一路大型プロジェクト中止、消費税廃止、司法など三権の腐敗一掃、政府系企業トップ陣の総入れ替えなど、政治の透明性と民主化を推し進めているマハティール首相。