9月12日、内外の多くのメディアが駆けつけた記者会見でも記者から、「どうして今、下院の補選なのか。マハティール首相との公約はまだ先ではないか」という質問が投げつけられた。

 党を代表して回答した事務総長は「マハティール首相と禅譲期限を具体的に決めているわけではない」と答えるのが精一杯だった。

 「下院補選は11月の党代表選挙を経て、政権交代後の党の基盤を固めてからでも十分間に合う」(与党幹部関係者)という声も多かったからだ。

 そんな“逆風”の中、アンワル氏が早急な禅譲を目指すには実は訳がある。

 それは、日に日に増す「内憂外患」の問題を抱えているからだ。

 まず、「内紛」への対処だ。その対処次第では、党の分裂も予想され、自らの首相への野望も打ち砕かれる可能性がある。

 問題は、11月の党選挙を見据えたアンワル氏が自ら設立した与党連合(希望同盟)の最大政党、人民正義党(PKR)の幹部の激しい対立だ。

 もともと、同政党は日本の自民党のように、「自分党」気質の議員が多く、内部対立が一種、政党カラーのように“定着”していることで知られる。

 1998年にマハティール首相(当時)と経済政策や汚職・腐敗問題などで対立。アンワル氏が失脚、投獄されてから同党は前身の国民正義党(PKN)を経て、設立された。

 それから20年近く、野党の辛酸を嘗めてきたが今回の政権交代で最大与党に「大変身」。野党の時代からは想定できない「政治的権力」「権益」を一手に掌握する立場に逆転。党幹部の権力闘争が激化した。