そんなとき、仕事で打ち合わせに来たHS証券の野口英昭(故人)から、スカイマークエアラインズ(現スカイマーク)の増資の引受先探しに苦労している、と打ち明けられた。

個人資産から35億円

「スカイマークの増資を引き受けてくれる人を見つけなくちゃいけないんです、35億円集めないと2期連続の債務超過となって上場廃止になります、そうなると確実に潰れるんです、という話でした」

 JAL、ANAに次ぐ第3の航空会社として、エイチ・アイ・エスの澤田秀雄社長(当時)らが出資して設立されたスカイマークは、1998年に運航をスタートさせ、マザーズ上場も果たしていたが、西久保がこの話を聞いた2003年当時は深刻な経営危機に見舞われていた。

 だが、仕事で海外に行く機会も多く、シンプルなサービスで格安の航空運賃を提供しているサウスウエスト航空などの存在を知っていた西久保は、この時スカイマークの事業に社会的な意義を感じていた。

「野口さんは、『35億円をポンと出してくれる人を見つけるのはまず無理なので、2~3億の小口に分けて出資者を募るしかない』と言っていました。

 ただ株っていうのは5%や10%だけ持っているのと、筆頭株主になるのとでは意味合いが違ってきます。筆頭株主になれば経営のイニシアチブが握れますから。スカイマークも35億円出したら筆頭株主になるというので、野口さんに『ちょっと考えてみてもいいよ』と答えたんです」

 そこから話はトントン拍子に進んでいく。澤田から直々に増資の引き受けを要請された西久保は、実際スカイマークの便にも乗ってみた。そこで「普通の航空会社じゃないか。リスクはあるけど面白そうだ」と感じた西久保は、野口から話を聞いた翌月には、個人資産から35億円を出し、筆頭株主となった。