税金、食費、交際費? カロリーが消費される仕組み

夜食は本当に太りやすいのか?(前編)

2017.09.15(Fri) 大平 万里
筆者プロフィール&コラム概要
家計の収支計算で「痩せる」「太る」を捉えてみると・・・。

「夜食べると太るよ~」

 深夜の居酒屋だけでなく、一般家庭でも夜中に冷蔵庫の食材をあさる家族への「警句」として、これほど汎用されているものもないだろう。実際、恰幅(かっぷく)の良い男性が深夜の繁華街でラーメンをすする光景はよくみかける。しかし、逆に夜中にどれだけ食べても一向に太らない人がいるのも確かだ。いったいどちらが本当なのだろうか。

 現在、「夜食の是非」については、遺伝子レベルでの研究もかなり進展し、一昔前とは比べ物にならない程に多様な知見が蓄積してきた。しかし、皮肉なことに、知見が蓄積したが故に、夜食と肥満の関係が一筋縄ではいかないことも分かってきた。どう一筋縄にはいかないのかを具体的に記す前に、肥満について改めておさらいしておこう。

ATPは「現金」、脂肪は「資産」

 肥満とは、体脂肪が標準よりも多く体内に蓄積している状態である。具体的には、脂肪細胞内の中性脂肪が過剰になっている状態だ。減量(ダイエット)とは、この脂肪細胞に存在する中性脂肪を減少させる試みである。そして、中性脂肪を減らす基本的な考え方は、「消費カロリーを増やす」及び「摂取カロリーを減らす」の2つしかない。

「消費カロリーを増やす」と聞いて、多くの人は中性脂肪がどんどん分解していく様をイメージしたかもしれない。では、なぜ中性脂肪は分解するのかと言えば、生命維持に必要なエネルギー源を獲得するためである。そのエネルギー源をATP(Adenosine Tri-Phosphate、アデノシン三リン酸)という。

 このATP、しばしば現金に例えられる存在である。いくら高価な物品や貯金があっても、手持ちの現金を全く持ってなければ、実際の生活を送るには非常に不便である。生命活動で使うエネルギーもまた、ATPという形に「換金」しなければいけないのだ。中性脂肪の分解の過程で生じたATPは、さまざまな生命活動のために瞬時に消費され、その副産物として熱も発生する。

中性脂肪とATPとエネルギーの関係。赤い矢印はエネルギーの移動を示す。
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1964年東京生まれ。生物・化学系ライター。熊本大学理学部生物学科卒業。北海道大学理学研究科博士課程修了。博士(理学)。旧工業技術院(現・産総研)、秋田県立農業短大附属属研究所などの流動研究員、高校教諭等を経て現在に至る。最近はその辺に転がる岩石の来歴が気になってしょうがない。


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