本書では、第1章から第3章が、この「21世紀のマンハッタン計画」とも呼ばれるサイバー兵器スタックスネットの作戦が臨場感あふれる文体で描いている。ブッシュ・オバマ両大統領の指揮下で秘密裏に開発された経緯や、オバマ政権下で実行される様子、ドイツ人エンジニアによってその正体が発覚するまでの過程など、息をのむような展開だ。

 中盤の第6章から第9章では世界最強サイバー大国アメリカの実態が深堀りされている。一部、元NSA(アメリカ国家安全保障局)職員のスノーデンの内部告発によって暴露されているが、手段を選ばずにあらゆる情報を収集し、サイバー攻撃を実施する傍若無人でえげつないアメリカの姿がこれら章からみてとれる。NSAの中でも攻撃的サイバー攻撃を最初に実行する部隊であるROCのモットーが、そのジャイアンっぷりを物語っている。

“あなたのデータはわれわれのもので、あなたの装置はわれわれの装置である ”

売買されている極秘の武器

 そんなアメリカが、今、血眼になって集めているサイバー兵器があるという。「ゼロデイ」という、一般にまだ気づかれていないプログラム上の欠陥だ。その脆弱性を突いて悪用するサイバー攻撃はゼロデイ攻撃と呼ばれており、防ぎようがない。いくらセキュリティ・ソフトをインストールしていても対処不能。高性能のセキュリティ・ソフトといえども、既知のウイルスは駆除できるが、世に知られていない脆弱性を攻撃するマルウェア(悪意ある不正プログラム)はスルーしてしまうのだ。世界最初のサイバー兵器スタックスネットは、このゼロデイ脆弱性を少なくとも4つ駆使することで完璧な攻撃が実行できたという。