前回の記事「大学の就職予備校化を招いた『キャリア支援・教育』」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48915)では、2000年代初め、各大学の「就職部」「就職課」などが「キャリアセンター」「キャリア支援センター」などへと名称変更(組織変更)していった時期を境として、大学が伝統的に学生に提供してきた「就職支援」の機能が強化されると同時に、より幅広い「キャリア支援」にも向かい始めるスタートの時期までを見た。あわせて、役割・機能を拡大したキャリアセンターが、そのことによって、その後に抱え込むことになった困難や問題性についても予告的に示しておいた。
そのことを踏まえ、今回は、その時期以降、現在に至るまでの動き――「就職支援」を強化し、あわせて「キャリア支援」にも拡大されたキャリアセンターの学生支援の取り組みの内部において、いったい何が起きたのか――を追ってみたい。
この間の経過の全体像を理解するために引くことのできる補助線は、(1)キャリアセンターの取り組みの「拡大」と「拡張」であり、(2)学部等の教育課程における「キャリア教育科目」の登場である。
以下、主として(1)について、見ていく。
キャリアセンターによる就職支援の「拡大」
2000年代前半、名称・組織変更によって次々と立ち上がっていった各大学のキャリアセンターの活動として、まず注目されたのは、従来の就職部が実施していた就職支援の役割を引き継ぎつつも、取り組みのメニューを大きく「拡大」していったことである。
その背景の1つには、1990年代の後半以降に目立ち始めた大学生の就職難があり、この時期にはそれがピーク期を迎え、「超氷河期」という言葉が跋扈するほどに深刻化していたということがある。
要するに、学生たちがなかなか就職できなくなったので、キャリアセンターとしては、これまで以上に就職支援の取り組みを強化せざるをえなくなったのである。