そして、壁面にびっしりとディスプレイされていたのは、ハローキティのぬいぐるみだ。しかしその顔は歪んでおり、「本当にライセンス商品なのか」と首をかしげてしまう。レジ回りにはバンドエイドやウェットティッシュが大量に陳列されており、ドラッグストア的な品揃えも抜かりない。

 頭はユニクロ、胴体は無印と100円ショップ、尻尾はサンリオ・・・、日本の様々な小売りスタイルや商品、キャラクターを継ぎはぎしている様は、ギリシャ神話に登場する怪物「キマイラ」を思い起こさずにはいられない。

ビジネスモデルの宝庫だった日本

 日本を売りにすれば商売になる――。これは中国で今に始まった現象ではない。2000年代初頭から、高級な日本ブランド商品は上海で一部の“日本贔屓”に熱く支持されていた。

 当時、日本から輸入された高級品は「なかなか行けない日本」のものだからこそ価値があり、飛ぶように売れた。だが、ここ数年で気軽に訪日旅行ができるようになったことで、中国人が欲しがる日本商品は変化していく。

 例えば、「青森のりんご」は1個100元という値段がついたものもあり、日本を代表する高級商材の1つだった。だが最近は、売り場に並べられる日本の高級りんごは以前よりも数が減ったように映る。実際、青森県りんご輸出協会のホームページからは、平成27年産は対前年比2.4倍の1622トンを中国に輸出したが、平成28年産は453トンに落ち込んでいることがわかる。(年産とは当該年の9月から翌年の8月まで)。

 その代わり、食品、雑貨など身近な日本ブランドに関心を持つ中国人が増えてきた。中国の小売業者は、日本の高級品ではなく、日本人が日常的に使う商品や日本流のサービスを提供するようになった。現地で貿易業を営む日本人経営者は、「日本仕込みの『安心・安全』を事業の柱に据える中国人経営者も出てきています」と言う。

 日本に爆買いにやって来た中国人旅行客は、商品だけに気を取られているわけではなかった。「日本のビジネス」に感心し、魅了され、中国に持ち帰った。日本はまさにビジネスモデルの宝庫だったのである。今後、さらに多くの「日式モデル」が中国の内需喚起に貢献することだろう。

 だが、それは日本の競争力が失われていくことも意味する。日本のお家芸で勝負できるのは果たしていつまで?――日本ブランドがもてはやされる一方で、日本の事業者の間ではそんな不安も出始めている。

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