70年前、東京下町は火の海となった。

 1945年3月10日、0時過ぎ。前夕、グアム、サイパン、テニアンを飛び立ったB-29、279機が来襲、投下された焼夷弾により引き起こされた深夜の大火災は風に煽られ拡大、当時500万ほどの人口の東京で、死者数は10万を超えたとも言われる。

無差別爆撃は戦争犯罪か否か

明日への遺言

 こうした「絨毯爆撃」とも呼ばれる都市「無差別爆撃」は70都市余りにも及び、その1つ、名古屋空襲では、撃墜された爆撃機搭乗員が捉えられ、処刑された。

 『明日への遺言』(2007)は、戦後、捕虜に対する国際法違反とされ、横浜法廷で行われた軍事裁判を当時の司令官を中心に描いた作品。

 司令官にとってみれば、無差別爆撃なのだから搭乗員は戦犯容疑者であり捕虜ではない。そして、一定の法的手続きにのっとり、処刑命令を出した、というものだった。

 映画の冒頭、パブロ・ピカソの有名な「ゲルニカ」が大映しとなる。

 北スペイン、バスク地方の町の名がつく絵画のテーマは初の都市無差別爆撃となったゲルニカ爆撃。1936年勃発したスペイン内戦で、フランシスコ・フランコの反乱軍サイドについたドイツが、1937年4月、空軍のコンドル軍団を送り込み、焼夷弾を大量使用して行ったものだった。

 そして、バスク地方の反フランコ派抵抗勢力は萎み、スペインは1970年代にまで続く独裁へと向かうのである。