トヨタの新型燃料電池車「MIRAI」、国内販売は12月から

トヨタ自動車の新型燃料電池車(FCV)、「MIRAI(ミライ)」(2014年11月17日撮影)。〔AFPBB News

 しばらくご無沙汰してしまったけれども、年も改まったところでまた自動車を核とした視点から技術、産業、科学・・・を読み解きつつ、日本の今日明日を考える話を書き綴ってゆこうと思います。

 2014年末に、日本の自動車産業界から発信された話題の1つに「燃料電池で走るクルマ、いよいよ市販へ」がある。

 2014年11月18日にトヨタ自動車が「MIRAI(ミライ)」と名付けたセダン・タイプの車両を「市販」すると発表したわけだが、この発表の前日、ホンダが「水素社会に向けたHondaの取り組み説明会」なる記者発表の場を急遽設定し、「2015年中に日本での市販を目指します」という燃料電池動力車のコンセプトモデルを公開したのが、お互いの思惑を映して面白かったが(2015年1月の北米オートショーで同じモデルを公開した際、日本での発売予定時期を「2016年3月」と修正している)。

 この時、トヨタの発表資料をもう少し詳しく読むと「販売目標台数:2015年末までに約400台」と記されている。しかしその後1カ月間の受注は約1500台に達したという。報道によればその6割が官公庁や法人、4割が個人とのことだが、それはすなわち量産前試作車を用いた限定された市場環境下における実用試験、と言っていい。それを「一般市場に向けた少量販売」という形を取るのは、1997年にそれまでの常識を破る「動力混合方式」のハイブリッド機構を搭載した初代プリウスを送り出した時のやり方とオーバーラップする。

 しかし内燃機関を主動力とするハイブリッド車の場合は、ガソリンスタンドさえあればどこにでも走ってゆける。実際に私は専門誌のテストに参加して1年間で2万5000キロメートル以上を踏破した。そうした中で、電池の充放電限界をはじめシステムの不具合を洗い出し、熟成を進めて行ったのではあった。その後、「単一モードだけの動力混合機構」の弱点も明らかになったのだが、これに対してトヨタは技術進化に踏み出すことをしないまま今日に至っている。