2014年暮れの総選挙では、消費税再増税の1年半延期を問うのが表向きの理由になった感があった。
しかし、安倍晋三首相は「国民の生命・財産や幸せな生活を守るための集団的自衛権も争点となることを前提」とした総選挙(「週刊新潮」2015.1.1・8)と位置づけていたし、実際に街頭演説では憲法改正が自民党の党是であるとも言及していた。
多くの国民は、積極的平和主義で内憂外患の現状打破に意欲を示す首相を支持した。そして、防衛大臣を除く全閣僚が再任された第3次安倍内閣が発足した。
この際、閣僚たちは主任の大臣たる行政大臣としてだけでなく、日本の将来を見据えた国務大臣の立場から指導力(政治力)を発揮しているのか、いくつかの事例から検証する。
国民抜き、財政再建優先の財務省
2014年11月26日付「産経新聞」の「政権の是非を問う」は、「15年間も成長しなかった日本経済は、とめどなく地上すれすれをさまよえるジャンボ機だった。2年前に機長が安倍晋三首相に代わり、順調に高度を上げつつあったが、突如エンジンが逆噴射し始めた」と書く。
原因は4月実施された消費税増税で、「墜落を防ぐため、来年10月に予定されていた10%への再増税を1年半先送りしたのは当然の判断だと言える」と賛意を表する。
しかし、再増税の是非を有識者に聞く政府の「集中点検会合」メンバーの人選は、財務官僚の意のままになるように、かつて増税反対を唱えた学者・エコノミスト全員が外されていたという。
この不公正ぶりに首相はあきれ、スタッフに「賛成・反対を50対50にしろ!」と命じたが、時すでに遅く、点検会合では圧倒的多数が「増税やむなし」と説き、財務省受けのいい学者は「増税見送りの政治コストが大きい」と政治論まで引っ張り出したそうである。