「ピーマン嫌いはそのままで」のススメ

食べものの好き嫌いの科学(後篇)

2014.07.25(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

 食べものの好き嫌いはどのように起きるのか。このテーマを前後篇で探っている。前篇では、行動神経科学を専攻している大阪大学大学院人間科学研究科の八十島安伸氏に、先天的、そして後天的な食べものの味に対する好き嫌いのメカニズムを聞いた。先天的には、多くの動物が苦味や酸味などは「嫌い」、甘味や旨味は「好き」と感じる仕組みを持っており、また後天的には、食べものを受ける腸と脳の間での情報のやり取りが、「好きになる」「嫌いになる」に大きな影響を与えているという。

 後篇も引き続き八十島氏に話を聞いていく。食べものの好き嫌いについて人々の間でよく言われる事例を取り上げ、どのような説明がつくかを尋ねてみたい。

年齢とともに「さっぱりしたもの」が好きになる理由

――年齢が進むと、油っこい食べものより、さっぱりとした食べものを好きになるといった傾向をよく聞きます。肉から魚へ、ラーメンから蕎麦へと食の嗜好が変わってきたという人も実際、多いのではないでしょうか。年齢とともに嗜好が変わっていくのはどうしてですか?

八十島安伸氏(以下、敬称略) 年齢による内臓の処理能力の変化が関わっているのではないかと推測されます。

 例えば、胃の消化能力が年齢とともに落ちていくと、油っぽい食べものなどは胃に滞留する時間が長くなります。脂質が多くなると消化不良を起こしやすくなり、それにより胃もたれや胃での食べものの長い滞留が生じてしまうと、胃からの不快情報として脳に伝わります。脳は、このような胃からの情報を味覚情報や口腔感覚と関連づけ(連合)します。これにより、油っぽいものへの忌避学習を知らず知らずに行ってしまうため、それらを避けるようになっていくと予測されます。

 しかし、消化の良い赤身の魚などのさっぱりしたものであれば、そのような胃の不快感があまり起きず、不快な内臓感覚が脳へと送られません。その結果、肉よりも魚へ、油っぽい食べものよりさっぱりした食べものへと嗜好が移っていくのでしょう。

 このような仮説はまだ実証されているわけではありませんが、消化能力の変化とそれに伴う学習によって、年齢を重ねると食の様相が変わってくると考えられます。

「甘い食べものは別腹」を科学的に説明すると

――嗜好をめぐって世間でよく言われていることについても聞きます。「酒を飲んだ後はとりわけラーメンが食べたくなる」ということがよく言われます。これは科学的な説明がつくのですか?

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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