「ピーマン嫌いはそのままで」のススメ

食べものの好き嫌いの科学(後篇)

2014.07.25(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要
八十島安伸氏。大阪大学大学院人間科学研究科行動生理学研究分野准教授。博士(人間科学)。大阪大学助手、福島県立医科大学講師などを経て、2007年10月より現職。専攻は行動神経科学。学習・記憶の脳機構や、味覚関連の食行動の脳制御機構などの解明に取り組んでいる。「日本味と匂学会 キリン研究奨励賞」「同学会 高砂研究奨励賞」などを受賞。

八十島 私自身がその研究をしているのではないのですが、京都大学の伏木亨先生からの情報によれば、以下のように説明されています。

 ビールなどを飲むと肝臓ではアルコールの解毒を進めるための機能がより活発化し、その反動で血糖値が下がると考えられています。そのため、炭水化物のようなエネルギー源が欲しくなります。これに加えて、ビールなどのお酒を飲むと利尿作用が働き、体内のナトリウムが尿として排出されてしまうために、体液のミネラルバランスが崩れます。これらの不足分を満たすには、炭水化物とナトリウムが含まれる塩味のものを摂取すればよいのですが、その要望を満たすのにラーメンがぴったりというわけです。

 そして、お酒を多く飲んだときの体の状態は、塩味が利いてエネルギー豊富なラーメンがとてもおいしく感じるように脳の反応性を変えてもいるのです。

――もう1つ、一時的な嗜好として「甘い食べものは別腹」と言われます。お腹がいっぱいになっても、デザートはまだ食べられるといったことですが、これについてはいかがですか?

八十島 私の恩師である畿央大学の山本隆先生がこのテーマについて解明なさっています。

 甘い食べものは、摂食行動を促すオレキシンという脳内物質を分泌させやすいといいます。オレキシンが脳内で分泌されると、胃が弛緩することで、胃の一部に空間ができることが報告されています。まさに“別腹”のようなものでしょう。

 さらに、おいしい甘い食べものは、より早く胃から腸へと送られることが示されているので、胃がより多くの食べものを受け入れられるようになるとも考えられています。

 胃に長い時間、食べものが滞留していると満腹感をつくり出す情報が脳へと送られますが、胃から食べものが素早く排出されれば、満腹感が抑えられ、結果的にさらに食べられるようにもなります。

「辛いものにはまる」と「ランナーズハイ」の関係

――「辛いものにはまっている」という人も多く見られます。辛さは、甘味や旨味などと違って味覚ではないと聞きます。となると、辛い食べものが好きというのは、どう説明がつくのでしょうか?

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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