「ピーマン嫌いはそのままで」のススメ

食べものの好き嫌いの科学(後篇)

2014.07.25(Fri) 漆原 次郎
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 このような報酬への満足の度合いが、「やみつき」へと至らせるかどうかに関わっているのではないかと考えています。

食わず嫌いが過ぎると「ピッキーイーティング」に

――食べもの嫌いの方についても聞きます。「食わず嫌い」はよく言われるものですが、食わず嫌いはどのように生じるのでしょうか?

八十島 これは、前篇でも紹介しましたが、「食物新奇性恐怖」の現れと言えます。動物は、初めて出合う食べものを潜在的に危険なものであるとして用心します。これが新奇性恐怖です。結局、これにより食わず嫌いになってしまっているわけです。

 食わず嫌いの度が過ぎて、好きな食べものだけしか食べないといった、極端な選り好みをする人もいます。こうした人を「ピッキーイーター(Picky Eater)」と言います。米国では、大人のピッキーイーターが増えているとも報告されています。

 新奇性恐怖がずっと続いてしまう、あるいは、新奇性恐怖からピッキーイーティングの食事傾向に変わってしまう、ということがあるとわずかな種類の食べものだけしか食べないということにつながります。

――そのような偏食が起きる人もいれば、なんでも食べられる人もいます。違いは何なのでしょう?

八十島 これには性格特性が一因であるとも考えられています。“新しもの好きではない”人は、新奇性恐怖が強くなりやすいと報告されています。また、不安傾向が強かったり、神経症の傾向が強かったりする人も、新奇性恐怖が強いと言います。新奇性恐怖が強いと食わず嫌いの食べものが多くなります。

 逆に、“新しもの好き”な人は、初めて出合う食べものもどんどん試していくようです。この傾向を「食物新奇性愛好」と言います。こうした人は、なんでも食べるようになりやすい行動傾向があると言えます。

 ただし、性格特性だけがピッキーイーティングの原因となるわけではありません。例えば、味覚がそもそも鋭敏な「超味覚者」あるいは「スーパーテイスター(Supertaster)」と呼ばれる人が、ある割合でいると報告されています。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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