STAP細胞の元論文すべての撤回が決まってから、世の中にこの騒動に関してまともなコメントをする記事が増え、不幸中の幸いと思っています。

 1つ理解できるのは、特にバイオの研究に直接関わっている皆さんにとっては、デリケートな事情が多く不用意な発言がしにくいこと。いまや論文が全撤回されたことで、この種のブレーキはほとんど存在しなくなったと言っていいでしょう。

 今回の問題は、決して珍しい話ではなく、構造要因を放置すればいくらでも繰り返されかねない問題であることは、どれだけ強調してもし過ぎることがありません。

 7月7日(月) 夕方17:30から、東京大学文学部第一大教室(本郷キャンパス法文2号館)で哲学熟議「研究倫理と生命倫理・・・STAP細胞問題に端を発して」を開きます。お申し込みは、建物の安全管理上、お名前と確認できるメールアドレスを明記の上gakugeifu@yahoo.co.jpまで、メールをお送り下さい。

 現時点でのホームページには哲学の一ノ瀬先生、環境倫理の鬼頭先生、地震学のゲラ―先生など、バイオ系でない方のお名前だけを掲載していますが、これから1カ月の間にどんどん直接の専門家が発言しやすい状況が整っていくと予想されますので、当日は、このどうしようもない問題を、二度と繰り返さないよう、大学や専門家は何を考えどう行動すべきか、社会は何に気をつければ再発が防止できるか、直接討論したいと思っています。

「否定の証明」は難しい

 この連載でSTAP細胞の話を書くと、ツイッターやフェイスブックでいろいろな反応をいただきます。その中で典型的な症状と思ったものについて、病理を明らかにしつつ触れてみたいと思います。どうか同じ過ちを繰り返さないでほしいという気持ちを込めています。

 例えば、以前もてはやされ、その後触れられなくなった「常温核融合」や「高温超伝導」のケースを挙げて、過った主張をされる方がありました。いわく

「常温核融合」は、その存在を肯定も否定もされない状態が20年ほど続いている。そういうものを見るとき、STAP細胞は・・・うんぬんかんぬん

 こういう話を書く人は、少なくとも大学院レベル以上の科学の専門、つまり研究というものに触れたご経験がないものと思われます。

 そこで、誰でも分かる例を挙げて、こういう誤りを避ける一助にしてほしいと思います。例によってやや尾籠な例え話で恐縮ですが、こういう分かりやすいモノを書くのは実は大変なんですよ。小難しそうな顔してる方がどれだけらくか、というのも分かってほしいところであります(苦笑)。