菅直人首相は消費税増税を掲げて2010年7月11日の参院選に臨んだものの、その使途や低所得者への負担軽減など基本的な制度設計を怠っていた。このため有権者から「消費税10%」を腰だめの数字と見抜かれてしまい、改選前議席を10も下回る惨敗を喫した。

 これに対し、みんなの党は官僚バッシングと成長戦略を前面に押し出す一方で消費税増税には慎重なスタンスを取り、改選前0から一気に10議席へ躍進(非改選と併せて11議席)。単独で国会に法案を提出できる議席を確保したが、これからは「責任政党」として政策立案能力が問われる。

 渡辺喜美みんなの党代表の【政権奪取戦略】(下)では、経済・財政・金融政策にどう取り組んでいくのかを聞いた。

 この中で渡辺氏は、名目4%成長を達成できれば消費税率を引き上げなくとも、財政再建は実現できるとの認識を表明。また、財務省を解体した上で「内閣予算局」や「歳入庁」に予算編成や徴税の機能を移管し、霞が関に「大革命」を起こすと宣言した。

 また、地方公務員の給与引き下げや日銀法の抜本的な改正など、「官尊民卑」社会を刷新した上で日本経済の再生を目指していく姿勢を鮮明にしている。(2010年7月22日取材 AFP提供以外は前田せいめい撮影)

【政権奪取戦略】(上)「民主党は『内ゲバ』から分裂・崩壊」

デフレギャップ30兆円解消、名目4%成長は難しくない

みんなの党代表・渡辺喜美氏/前田せいめい撮影渡辺 喜美氏(わたなべ・よしみ)
1952年栃木県出身 中学時代にプロ野球選手になる夢を諦め、政治家を志望 早大政経学部・中大法学部卒 83年父・渡辺美智雄元副総理の秘書となり、通産相・外相秘書官を歴任 美智雄氏の死去に伴い、96年自民党公認で衆院初当選 98年の金融国会で「政策新人類」として活躍 無派閥となり党執行部批判を展開 2006年安倍政権で行革担当相として入閣、公務員制度改革を推進 07年行革兼務の金融担当相 08年民主党提出の衆院解散要求決議案に賛成し、麻生政権に造反 09年1月自民党離党 8月みんなの党結成、代表就任

 JBpress 参院選でみんなの党は「増税の前にやるべきことがある」と主張して勝利を収めた。しかし財政再建を実現するには、最終的に消費税増税が避けられないのでは。

 渡辺喜美氏 先ず、財政再建に必要なのは消費税増税ではなく、経済成長の回復になる。

 なぜ国の借金が膨らんだかというと、それは日本の成長が止まってしまったから。過去10年間の日本の名目成長率はほとんどゼロ。一方、先進7カ国(G7)では平均4%台になる。実質成長率では大差がなく、物価上昇率が(日本と他国では)全然違うからだ。IT革命や中国が「世界の工場」になったから日本の成長が停滞したのではなく、日本の経済・金融政策が出鱈目だったことに尽きる。

 デフレギャップが30兆円もある限り、経済は成長しないから、失業者や自殺者の数は高止まりを続けている。デフレギャップを解消した上で、民間による自由なリスクテイクや競争を可能にする。国境の壁をできるだけ低くすれば、30億人を抱えるアジア市場の成長力も日本に取り込める。名目4パーセント成長の回復は難しいことではない。

 業種ごとの成長戦略では絶対にうまくいかない。官僚が「この業種を育てよう」と息巻いて、補助金と規制でやってきた政策が大失敗している。真の政治主導を確立できれば、日本は他の先進国並みの成長を達成できる。

消費税収全額を地方へ移管、補助金・交付税は廃止

 ━━ 「消費税増税は必要ない」という考えなのか。

 渡辺氏 内閣府の試算では名目成長が2パーセントなら、2020年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化のために消費税は15%まで引き上げなくてはならない。3%成長なら消費税10%が必要だが、4パーセントなら消費税は5パーセントのままで済んでしまう。これは政府が認めていることだ。

JBpressが注目する日本の政治家30人「渡辺 喜美」