望みの綱は「パイプライン」、
ウクライナ危機に打開策はあるか

国家間紛争を抑制するパイプラインネットワークの効果

2014.03.27(木) 藤 和彦
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 EU内で消費する天然ガスの約3割がロシア産であり、その全量をパイプラインを通じて輸入している。近年まで欧州向け輸出の8割がウクライナ経由だったが、2011年からバルト海を通るノルドストリーム・パイプラインが稼働したため、ウクライナ経由は6割にまで低下してきている(黒海を経由するサウスストリーム・パイプラインが実現されれば、ウクライナの経由の割合はさらに低下する見通しである)。

 EU首脳は「ロシア産原油や天然ガスへの依存を減らす」との方針を打ち出したが、具体的な手段は見つからない。ロシアの天然ガスの最大の需要先であるドイツは脱原発政策を進めているが、手厚い補助金で保護された再生可能エネルギーの大幅供給増で電力価格が下落したため、大手電力会社が保有する火力発電所の収益が悪化している。

 このような状況下で、ロシアの天然ガスに代えて割高なスポット天然ガスを調達する状況は、なんとしても避けなければならない。

 シェールガス革命で天然ガスを自給できる目途が立った米国では、国会議員が欧州へ輸送されるロシア産ガスの代わりに米国産天然ガスを輸出するための法案を提出しているが、その輸出は早くても3~4年後であり、現在の欧州のエネルギー情勢を直ちに改善するものではない。

 さらに米国の天然ガスの生産量が増加しているが、かつての供給過剰感がなくなっているため、天然ガスを大量に輸出しようとすると国内価格が上昇する懸念も出始めている。産業復活の切り札と頼みの綱とする「安価な天然ガス」を失ってまで米国は欧州を支援するとは思えない。

 欧州主要国とロシアは、1973年のパイプライン開通以来40年にわたり莫大な利益を共に得てきており、「エネルギー同盟」とも言える強い関係にある。双方がこれを直ちに放棄するとは考えにくい。

安全保障環境に寄与するエネルギーの相互依存関係

 歴史を振り返れば、1970年代の欧州地域は、緊張緩和(デタント)の兆候は出てきていたものの、相変わらず冷戦の状態が続いていた。しかし、OPECが世界の石油市場での存在感を高めたため、西欧諸国は石油への依存を軽減する必要があるとの認識から、シベリア地域で相次いで発見された大規模な天然ガス田に注目するようになった。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

エネルギー戦略

20世紀の社会を築き、支えてきた石油。しかし世界的な環境意識の高まりの中で、石油依存社会の限界が明らかになりつつある。石油はいまどうなっているのか。石油社会の次を築き、新世紀を切り開くイノベーションは何か。その最先端の姿をリポートする。

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