グーグル共同創業者ラリー・ペイジ氏(左)写真提供:ロイター/©Vincent Isore/IP3 via ZUMA Press/共同通信イメージズ ※Belgium,Denmark,France and Germany Out
理不尽な要求、無駄な手続き、使いにくいシステム──組織には、人の意欲と時間を奪う“摩擦”が溢れている。問題の本質は何か? どうすれば取り除けるのか? スタンフォード大学の組織論研究者が著した『FRICTION』(ロバート・I・サットン、ハギー・ラオ著、高橋佳奈子訳/日本能率協会マネジメントセンター)から内容の一部を抜粋・再編集。
管理職を一掃しフラットな組織への回帰を目指したグーグル。だが、その現場である問題が起きる…。
無自覚なリーダーたち
『FRICTION(フリクション)』(日本能率協会マネジメントセンター)
■ ヒエラルキーは必然だが有効でもある 回避策はあるが、見当違いのリーダーは有害だ
回避策は存在するとはいえ、序列の最上位の人々は、見当違いで、自信過剰で、利己的になる危険を抱えている。ヒエラルキーは、階層があまりに多く、ばかげたルールや伝統による制約がある場合、あるいは、リーダーが権力の格差に柔軟性を認めず、固定されたものと見なす場合には、有害なものとなる。
多くの著述家やコンサルタントが、権力の格差をなくし、ヒエラルキーを駆逐することができれば─少なくともすべての組織を大幅に「フラット」にしたり、そこでの「階層を廃止」したりできれば─あらゆる場所で高い効率やイノベーション、幸福を実現できると主張しているのもそのせいだ。経営の専門家であるゲイリー・ハメルが「官僚制は滅びるべきだ」とか、「トップダウンでの権威構造を支持せず、順応性やイノベーション、エンゲージメントを強化することに真摯に取り組むべきだ」と述べているのも同様の理由からである。
しかし、どんな生物が集団を構成する場合でも、ヒエラルキーは不可避で有用でもあるということ、また、階層や権力の格差が少なければ少ないほどいいとも限らないことを示す、極めて強力な証拠も存在する。
心理学者のデボラ・グルーンフェルドとララ・ティーデンスが記しているように、ヒエラルキーの形態はそれぞれに大きく異なりはするが、全構成員の立場や権力がほぼ平等な集団や組織を見つけ出すことは不可能だ。研究対象が人間であれ、犬であれ、ヒヒであれ、ほんの数分観察すれば、ヒエラルキーははっきりとわかる。外部の目から見ても、リーダーとその部下のヒエラルキーはすぐに把握できる。






