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理不尽な要求、無駄な手続き、使いにくいシステム──組織には、人の意欲と時間を奪う“摩擦”が溢れている。問題の本質は何か? どうすれば取り除けるのか? スタンフォード大学の組織論研究者が著した『FRICTION』(ロバート・I・サットン、ハギー・ラオ著、高橋佳奈子訳/日本能率協会マネジメントセンター)から内容の一部を抜粋・再編集。
ルーカスフィルムで働き、後にピクサーを創業したリーダーたちは、キャッシュフロー改善のために社長が出した従業員の一時解雇命令から、どのように部下を守ったのか?
フリクション・フィクサーの取り組み方
『FRICTION(フリクション)』(日本能率協会マネジメントセンター)
部下を守ることは、経営陣が日常的に取り組むべき仕事だ。ヘンリー・ミンツバーグが長期にわたりシニアエグゼクティブたちを観察したところ、彼らは、突発的なものも含めた会議や情報の要求、大小さまざまな危機、その他の介入への対処を、何十、ときには何百も日々こなしながら、休みなく働いていることが明らかになった。
彼らがこうした仕事を引き受けているのは、他の人がそれをしなくていいようにするためだ。ミンツバーグはこのように述べている。「半ば冗談だが、マネジャーとは、部下たちが自分の仕事に専念できるよう、来訪者に応対する人のことだと定義する者もいる」。
ただ、人間の盾になろうとすれば、極めて健全な組織であっても、ときにはそういった日常的な仕事だけでは済まないこともある。ソフトウェア開発者でアジャイルコーチのマット・デビッドソンは、業務の途中、思いつきで優先順位がころころ変わる過酷でストレスの多い職場において、日々の衝突から部下を守るマネジャーとは、「上から降ってくる無理難題を受ける傘」のような存在だと考えている。
そうした最悪の職場で中核業務をこなす従業員のはるか上に立つ権力者たちは、従業員が業務を成功させるために何を必要としているかを理解せず、ばかばかしい要求を投げかけてくる。そのような従業員が幸運なら、「傘を手にした」上司がいて、上から雨あられと降りそそぐ無理難題をよそへそらしたり、衝撃を和らげたりして、業務を進められるようにしてくれる。そんな上司たちは、権力者たちの無能さがもたらす結果から権力者自身のことも守っているのだ。






